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゜。┏┫☆テキスト系創作メールマガジン 文芸同人主婦と創作☆┣┓。゜
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 ゜┗━┛         2007年03月10日号 通巻 219号 ┗━┛゜
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 初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の発行人、銀凰です。

 今週で瑞坂 菜さんの「加藤さんの約束」は連載終了となります。
 感想などございましたら、発行人気付でOKですので是非お寄せ下さい。
 
 それでは早速本日の会報をお楽しみ下さいませ。
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◇本日の目次…
 ▲オススメメールマガジン・HP・情報紹介
 ◆連載小説…瑞坂 菜 加藤さんの約束 第3回(最終回)
 ◆連載小説…神光寺かをり クレール光の伝説・古の【世界】 第49回
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◇メールマガジン・HP情報紹介
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☆「歴史好きの素人が語る歴史」
  歴史が好きなあなたに、やさしい言葉で語ります。
  日本史、中国史、西洋史、そして台湾史さらにモンゴル史、
  ベトナム史まで、時代も場所も気分次第ですが、気楽に聞いてください。
  思いがけない発見があるかも知れません。
  ぜひ読んでください。
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◇連載小説 加藤さんの約束 第3回            作:瑞坂 菜
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 私たちは、表から見えない生垣の端にある、あの縁台に腰掛けた。
 妻は心なしか、疲れたようで、座った姿は縮んで見えた。
「花に水やってくれと言った約束は覚えているよ」
「ありがとう。守ってくれて。でも今年はタイミングが悪かったわね」
「約束を守るためだ。仕方ないだろう」
 この庭ができて数週間後のことだった。
 私は脳の中の血管が破れる病気で、妻と一緒にお茶を飲むことが二度とでき
なくなった。
 斎場の細くたなびく煙を足元に見てから、今年は三回目の盆だ。
『おくつろぎのところ、すみません。決まりですから準備してくださいね』と
いう天界の優しい声に促され、私は今年も三日間だけの約束で、この世に戻っ
てきた。そして最初にしたことが、あの約束、庭の水やりだったのだ。
 
「水はあの世とこの世をつなぐものだからね」
 妻は、フッとため息をついた。
「お向かいの子どもたち。あなたの姿が見えちゃって、びっくりしてたね」
 私は、さっきの子どもたちの様子を思い出して、ムッとした。
「仕方ないわ。どんなお家でも幽霊に会った時のごあいさつなんて、教えない
わよ」
 なんの。幽霊なんて論外だ。自分の身の寄せるべき場所は分かっているつも
りだ。
「あの奥さん人柄のいい方だから、なにも考えずに蛇口を止めてくれたけれど、
水道代が家計に響くところだったわ」
 ニンマリと笑う妻。この物言いを聞いて、家に帰ってきたと改めて実感した。
「ねえ、あなた。私たちのあの約束、まだ覚えてる」
 子どもがいない私たちには、日頃からたくさんの約束事があった。その中で
も『最期のときは』という約束は、結婚するときからあった約束だった。
「ぼくの方が、君より一日でも早く逝く」
「私の方が、一時間でもあなたより長く生きる」
 私たちは、じっとお互いを見つめながら言った。
「ありがとうあなた、覚えていてくれて。私も忘れてないわ」
 妻は、また、ニンマリと笑うと、ラジオ体操から子どもたちが戻ってくるか
ら、また大騒ぎにならないようにと、玄関を開けてくれた。
 妙にひんやりした空気が、二人で毎日過ごした南向きのリビングに満ちてい
た。ものが減っていて生活の気配も薄かった。
 そして、そこのソファーには息をしていない妻が、眠るようにじっと横た
わっていた。
「約束を守るって、思ったより難しいものね。あなたより長く一人で生きるこ
とも、増して楽しむことも、本当に難しかった」
 妻は、カーテンを開けて透き通るような笑顔で言った。
「玄関も開けたままだから。これで発見が早くなるわ」
 ラジオ体操が終ったのだろう。子どもたちの声が遠くから聞こえてきた。

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★文芸同人「主婦と創作」ではあなたの作品のご投稿をお待ちしています。
投稿は専用メールフォームで(http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html)
投稿に際しては投稿規約(http://mm.9no1.gozaru.jp/03.html)必読です。
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◇連載小説 クレール光の伝説・古の【世界】 第49回  作:神光寺かをり
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 彼は顎で舞台を指し、呟く。
「二幕が開いた」
 牧歌的な書き割りの中で、領主の娘の婚礼を祝う村人達はどこまでも陽気に、
楽しげに舞い踊っている。
 規則正しく、回り、跳ねるその人の輪の中に、別の動きをする者があった。
 古びたローブの人物は、歌う村人の間を、手をつないで踊る娘達の間を、囃
し立てる若者達の間を、縦横に駆けめぐっている。
 人々はそれに気付いていないかの如く振る舞っている。舞台の上の「世界の
現実」においては、彼は人間の目に見えない存在なのだ。
 流れてゆく時、知ることのできない真実、未来から(あるいは観客から)見
た既成事実の具象。空気。なくてはならぬが、見ることも抱くことも操ること
もできぬモノ。
 彼は再び言う。
「時は古。知るすべ無き昔。世界を巡るは一陣の風」
 ローブの裾を翻し、彼は下手へと消えた。
「あの野郎は、どうやら『フレキ・ゲー』を演じているらしいな。つまり、遠
い未来にこの与太話を書いて、それを芝居にかけちまった自分自身を、さ」
 ブライトはクツクツと笑っている。
「その言い様では、まるであの人がフレキ叔父その人のように聞こえてしまい
ます」
 エル・クレールは漸く声を絞り出した。ブライトは含み笑いをかみ殺し、
「安心しな、そう思うのはお前さんぐれぇだよ。普通の観客はそこまで莫迦な
心配はしねぇさ。ただし、作者として挙がっている名前と北の海っ縁の殿様と
を『同名の別人』と思って観ちゃぁくれンだろう……。流石にあの野郎を『都
の玉座に座り損ねた末生り瓢箪』本人だとは思いやしないだろうが、役者がそ
いつを演じていると解釈する賢いのはいるだろうな」
 言い終わらぬうちに、またブライトの背中は小刻みに上下し始めた。彼は顎
を支えているのとは反対の手をけだるそうに持ち上げ、舞台上を指さした。
「書き割りの、領主屋敷の窓ン中」
 指先を視線で追ったエル・クレールは、描かれた高窓に掛けられたレースの
カーテンの向こうに、人影が動いているのを見た。
 官製の脚本であれば、その窓の奥は領主の娘クラリスが半ば幽閉される形で
住まわっている部屋と言うことになる。中に居るのは麗しい姫君だ。
 彼女はこの幕では姿を見せることがない。見えるのは、カーテンの隙間から
差し出し出される、細い腕のみだ。
 窓の下では領民達が祝いの踊りを舞っている。クラリス姫の腕は、その輪に
向かって花冠を投げ落とす。
 村の娘達はそれを踊りへの褒美と認識した。そして花冠を頂くのに一番ふさ
わしいのは誰であるのかについて争いはじめ、奪い合いの果てに粉々に壊して
しまう。
 これが二幕目の筋立てだ。
 そしてこの芝居でも、筋書き通りにカーテンの隙間から腕が突き出された。
青みを帯びた貝細工《カイザイク》の花冠を掴んでいる。
 腕は花冠を踊りの輪に向かって投げるとすぐにカーテンの中に消えてしまっ
た。同時に花冠の奪い合いの騒乱が起きる。
 元より藁のように乾いた貝細工の花は、あっという間に崩れて散る。
 そこで幕が下りる。あっという間の出来事だ。
 カーテンから出た白いドレスを着た腕のその先、花冠を掴んでいた手指が赤
銅色に日焼けしていたことに気付く者は少ないだろう。
 逆に気付いた者には、強烈な印象として脳裏に焼き付くこととなる。そして
彼らは、演目のタイトルからして「戦乙女クラリス」というくらいだから、国
母クラリスを強く逞しい女性として描くための演出だと考えるに違いない。
 普通はそこまでしか考えが及ばないだろう。この演出の更に向こうに、何か
が隠匿されていると気付く者は、おそらくいない。
「最高に可笑しい真っ黒な喜劇じゃねぇか。あの野郎、判らない奴らを小馬鹿
にして、判ったヤツのことは嘲笑っていやがる。チビ助め、このネタを古びて
きたから捨てるなんてもったいないことを抜かしやがったが、命のある限り演
り続けるべきだ。……ま、このままじゃ明日の朝にゃ命が尽きてるかも知れン
がな」
 ブライトの忍び笑いを聞きながら、エル・クレールは自分の腕を見つめてい
た。
 元々は色の白い方だが、旅の空の下で日に晒される袖口から先は、小麦の色
に日焼けしている。
「男の振りをする……男でありたかった女……」
 無意識のつぶやきが、ブライトの嘲笑を止めた。

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