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 ゜┗━┛         2006年07月22日号 通巻 189号 ┗━┛゜
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 初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の発行人、銀凰です。
 
 今週から流河晶さんの新連載が始まります。
 早速本日の会報をお楽しみ下さいませ。
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★文芸同人「主婦と創作」ではあなたの作品のご投稿をお待ちしています。
投稿は専用メールフォームで。(http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html)
投稿に際しては投稿規約(http://mm.9no1.gozaru.jp/03.html)必読です。
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◇本日の目次…
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 ▲オススメメールマガジン&HP紹介
 ◆連載小説…流河 晶 <ヴァンパイア・ゴーレム> 第1回
 ◆連載小説…神光寺かをり クレール光の伝説・古の【世界】 第20回
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◇オススメメールマガジン・Webサイト紹介
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☆「天空のマントヒヒ」
  「心に注射を打たれたみたい」
  「マニアックな部分もあるけど、十分楽しめました」
  「バイオハザード好きにはたまらないかも」
  そんな読者の声が届いています。 あなたも頭の刺激に一読いかが?
  ぜひ読んでください。
>>http://www.magachan.com/maginfo.php?id=364&fid=56

※ 新せどりノウハウ
  本が好きでよくブックオフ、古本屋に出かけるというあなた!
  新古書店の棚の中には、マニアが探し求める宝の本が眠っています。
  一緒にお宝さがししてみませんか♪
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◇連載小説 <ヴァンパイア・ゴーレム> 第1回    作:流河 晶
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 砂塵(さじん)舞う荒野の彼方から、漆黒のマントをはためかせ、黒馬を駆
(か)って近づく一人の騎士。
「──やっ!」
 華奢(きゃしゃ)な腕を振り上げて、黒騎士は馬から飛び降りざま、長身で
たくましい白騎士目がけて斬りつけた。
「──名を名乗る気もないかっ!」
 白づくめの戦士は一喝しするとそれを受け止め、荒廃し切った地表に、鋭い
剣戟(けんげき)の音が響き渡る。
 互いの種族の命運を担った闘いが、たった今、開始されたのだ。

 鋭い気合と共に切り結び、離れてはまた剣を交え合う。
 熾烈(しれつ)を極めた闘いに、双方無傷でいられるわけもなく、いつしか
鎧(よろい)は、返り血とおのれの血とで紅く染められてゆく。

 禍々(まがまが)しい紅い月を背景にして、どれほどの時間、命がけの対決が
続いたものか。
「──たあっ!」
 一瞬の隙をついて、ついに白騎士の剣が、敵の兜(かぶと)を切り落とした。
「……くっ!」
 堪(たま)らず、黒の戦士はひざをつく。
「──今だ!」
 決着をつけようと、白い戦士は剣を振り上げる。
 次の瞬間、彼の口から、抑えようもなく驚愕の叫びが発せられていた。
「──アージェ!」
 地面に転がった漆黒の兜、その下から現れたのは……彼がよく見知っていた
顔だったのだ。


         *        *        *


 ──ヅーヅーヅーヅー。
 執拗(しつよう)なコール音が耳元で鳴り続ける。
 同時に完全睡眠装置はアドレナリンの体内濃度を上昇させ、宇宙探査船トル
レンス号の船長、フォルティス・ナーハフォルガー・スミスを目覚めさせた。
 漆黒の眼を幾度か瞬かせた後、彼は起き上がり、頭や体に接続されていた
コードやパイプを外しながら、インタフォンに声をかけた。
「どうした?」

「……お休みのところすみません、キャップ。まずいことが起きました。
 コックピットまで至急……」
「分かった、すぐ行く」
 彼は黒い髪をかき上げると、枕元のヘルメットに手を伸ばし、手馴れた動作
でそれを装着しつつ、隣接する操縦室へと向かう。

 ものの一分とたたぬうち、スミスは当直の第三班長、ジェベル・クレイブの
正面に立っていた。
「キャップ、ご苦労様です」
 軍隊式に敬礼をするたくましい男の姿が、船長の冷静な眼に映る。
「状況は?」
 返礼することなく、スミスは問い掛けた。

 班長は顔をしかめた。
「船内の酸素濃度が下がってきてます。気圧もです。
 ……忌々(いまいま)しいことに、漏洩(ろうえい)警報装置だけでなく、自動
修復装置の方までいかれてしまって」
「どれくらい下がった?」
 淡々とスミスは訊(き)いた。

「幸い、すぐ呼吸に支障が出るほどではないですが、このまま減り続けるなら、
どこかに寄港せざるを得ないかと。……そうなると、予定が……」
 ジェベルは暗い顔になった。
 すぐ隣にいた当直員が敬礼をし、説明を加えた。
「故障は十日前からのようです。酸素濃度の数値変化が異常に少ないとの報告
があり、ログを解析しましたところ、一月十六日以降、百分の一の変動も記録
されておりませんでした」

「そうか。コンピュータは正常なのだな?」
 スミスは表情も変えず、パネルの前に座るオペレータの一人に念を押した。
「はい。キャップ。
 色々走らせてみましたが、まったく異常なしです」
 オペレータは振り返り、答えた。

「──よし」
 一瞬の逡巡(しゅんじゅん)もなくスミスは目前の非常用ブザーを押し、広い
艦内に時ならぬ警戒音が響く中、彼はさらにスピーカーのスイッチもONにした。
「──クルーに告ぐ。クルーに告ぐ。緊急事態発生。
 全員ただちにヘルメットを着用し、まずは各自、居住スペースの酸素濃度
及び気圧を確認せよ。
 隕石の衝突または腐食により、気密漏れが起きていると思われる。
 アラーム装置故障のため、所定の手順に従い、班別に目視及び携帯用漏洩
発見装置により漏洩個所を探し出し、大至急補修せよ。
 修理班は、アラーム及び自動修復装置の修理にかかれ! 
 ──以上だ!」
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┌───☆│電||子||書||籍||掲||載||無||料|☆───┐
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│      詳しくはこちら → http://www.digbook.jp       │
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◇連載小説 クレール光の伝説・古の【世界】 第20回  作:神光寺かをり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 田舎の飯屋では滅多に見られない「重たい金貨」が、手荒れの酷い掌の中で
ぶつかり合って澄んだ金属音を立てる。
「旦那、こりゃ一体?」
 女将は驚くと同時に、商売人らしい欲気の混じった感謝の笑顔を浮かべた。
「ウチの姫若様からだよ。それとも、ここにいる衆みんなに一杯ずつ飲ませる
には、これじゃ足りないかね?」
「いいえ旦那方。これだけあればうちの酒樽が二回は空っぽになる」
 ニコニコと笑った女将は、もらった金貨を胸に押し抱いて、そのまま奥の厨
房へ駆け込んだ。
 程なく彼女と倅はもてるだけのマグに安酒を満たして戻ってきた。
 歓声を上げたのは件の農夫達だけではない。店にいた客の総てと、店の外で
見物と決め込んでいた通りがかりとが、どっと駆け寄る。
「旦那方、ご馳になります」「若様ありがとう」などと言いながら、あるいは
何も言わずに只酒に殺到する人々の流れに逆らって、エル・クレール=ノアー
ルはブライト=ソードマンに引きずられる格好で、漸く店から出た。
 通りに出てからしばらくの間、ブライトは「愛想の良い従者」の顔のままが
に股で歩いた。背丈が普段より頭一つ分ほど小さく見える。
 仕方なくエル・クレールは「気の強い田舎貴族」の体で、背伸びをしつつ後
を付いてゆく。
 人並みがとぎれたと見るや、ブライトはひょいと細小路に曲り込む。同じよ
うに角を折れて入ったエルの目の前で、彼は背筋と膝をグンと伸ばし、背丈を
元来の大男のそれに戻した。
「やれやれトンだ無駄遣いをしたもンだ」
 大きく伸びをしてみせる彼の鼻先に、エルの掌が突き出された。
「出費をさせられたのは私の方です」
 女の手としては骨太だが、剣士としてはほっそりとした指が、きっちりとそ
ろえられている。
「あなたが掏摸の真似事をなさるとは存じ上げませんでした」
 彼女が真顔で言うので、怒っているやら、あるいは感心しているのやら判別
ができない。
「貧乏人丸出しの俺の尻からアレが出てくるよりも、同じ貧乏そうな形でもお
貴族様に見えるお前さんが持っているものって具合に見せた方が、それらしく
見えるってもンだろう?」
 ある種の正論をブライトは半笑いしながら言う。エルの表情は変わらない。
 ただ、彼が「掏摸取った」彼女の物入れを返して欲しいと主張している事は
確かだ。そろえられた指が掌が反り返るほどピンと伸びる。
 ブライトがその上に小振りな革袋を乗せると、エルは中を見ることもなく腰
帯に結びつけた。
「……言うことがあるンじゃないのか?」
 無言を通す彼女に、ブライトは少々意地悪そうな声を掛ける。
「状況を打開してくださったことには感謝しています」
 あの時、田舎者の従者のフリをしたブライトが、「姫若様は事の後先を考え
ずに飛び出すのが悪い癖」と言ったが、それは
『間違ってはいない』
と彼女自身が感じていることでもあった。そしてそれは
『おそらく、この人の本音だろう』
とも思っている。
 エルには件の「身分証」を出して相手を引かせる等という手段は、思いも寄
らないことだった。よしんばそれを思いついたとしても、あの体勢ではイーヴァ
ンの剣を押さえ込むのが精一杯で、腰袋から物を取り出す余裕はなかったのだ。
 だから彼の機転には感謝している。
 知恵の回り方が羨ましいとも思う。
 その方面の思慮が足りない自分が情けなくもある。
 それを彼に見透かされ、いつまでも子供扱いされるのが口惜しい。
 だからこそ、そんな風に考えていることを悟られるのは恥ずかしい。
 エル・クレールはクチを真一文字に引き結び、ブライトの顔を睨むように見た。
 彼女の「自己嫌悪」の深さに、ブライトは気付いていなかった。ある程度
「反省」はしているだろうと思ってはいるが、悩むようなことではないからだ。
 彼女が先走れば自分が始末する。それは彼にとって当たり前のことだった。
 特にああいった「事件の場」では、良い「作戦」にもなるから、むしろ焚付
けるような真似もする。
 だからブライトは軽い調子で、
「じゃあ、それで無駄遣いは、チャラ、ってことで」
「私は無駄とは思っておりません。あの騒ぎを収拾するには、幾ばくか金子を
出すのが一番良いことでしょうから」
「俺の飲代は渋るくせに」
 茶化すように言いながら、ブライトは感心していた。
『大分世間慣れしてきた』
 少し惜しい気もする。世間知らずのオヒメサマは世間知らずのまま自分の掌
中にしまっておきたい。
「それこそ無駄遣いです――それより」
 顔を上げたエル・クレールは、にこやかに笑んでいた。ブライトの背筋に、
何やら冷たい物が走る。
「私のお尻に何やら硬い物が当りましたが、あれは一体何だっだのでしょうね?」
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ブログを書き、携帯ツールを販売し、ついには会社まで作ってしまった!

きっかけは、全て大好きな古本をオークションで売ることから始まりました。
このきっかけとなったノウハウを今、公開します。

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  「心に注射を打たれたみたい」
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◇連載小説 <ヴァンパイア・ゴーレム> 第1回    作:流河 晶
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 砂塵(さじん)舞う荒野の彼方から、漆黒のマントをはためかせ、黒馬を駆
(か)って近づく一人の騎士。
「──やっ!」
 華奢(きゃしゃ)な腕を振り上げて、黒騎士は馬から飛び降りざま、長身で
たくましい白騎士目がけて斬りつけた。
「──名を名乗る気もないかっ!」
 白づくめの戦士は一喝しするとそれを受け止め、荒廃し切った地表に、鋭い
剣戟(けんげき)の音が響き渡る。
 互いの種族の命運を担った闘いが、たった今、開始されたのだ。

 鋭い気合と共に切り結び、離れてはまた剣を交え合う。
 熾烈(しれつ)を極めた闘いに、双方無傷でいられるわけもなく、いつしか
鎧(よろい)は、返り血とおのれの血とで紅く染められてゆく。

 禍々(まがまが)しい紅い月を背景にして、どれほどの時間、命がけの対決が
続いたものか。
「──たあっ!」
 一瞬の隙をついて、ついに白騎士の剣が、敵の兜(かぶと)を切り落とした。
「……くっ!」
 堪(たま)らず、黒の戦士はひざをつく。
「──今だ!」
 決着をつけようと、白い戦士は剣を振り上げる。
 次の瞬間、彼の口から、抑えようもなく驚愕の叫びが発せられていた。
「──アージェ!」
 地面に転がった漆黒の兜、その下から現れたのは……彼がよく見知っていた
顔だったのだ。


         *        *        *


 ──ヅーヅーヅーヅー。
 執拗(しつよう)なコール音が耳元で鳴り続ける。
 同時に完全睡眠装置はアドレナリンの体内濃度を上昇させ、宇宙探査船トル
レンス号の船長、フォルティス・ナーハフォルガー・スミスを目覚めさせた。
 漆黒の眼を幾度か瞬かせた後、彼は起き上がり、頭や体に接続されていた
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「どうした?」

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 ものの一分とたたぬうち、スミスは当直の第三班長、ジェベル・クレイブの
正面に立っていた。
「キャップ、ご苦労様です」
 軍隊式に敬礼をするたくましい男の姿が、船長の冷静な眼に映る。
「状況は?」
 返礼することなく、スミスは問い掛けた。

 班長は顔をしかめた。
「船内の酸素濃度が下がってきてます。気圧もです。
 ……忌々(いまいま)しいことに、漏洩(ろうえい)警報装置だけでなく、自動
修復装置の方までいかれてしまって」
「どれくらい下がった?」
 淡々とスミスは訊(き)いた。

「幸い、すぐ呼吸に支障が出るほどではないですが、このまま減り続けるなら、
どこかに寄港せざるを得ないかと。……そうなると、予定が……」
 ジェベルは暗い顔になった。
 すぐ隣にいた当直員が敬礼をし、説明を加えた。
「故障は十日前からのようです。酸素濃度の数値変化が異常に少ないとの報告
があり、ログを解析しましたところ、一月十六日以降、百分の一の変動も記録
されておりませんでした」

「そうか。コンピュータは正常なのだな?」
 スミスは表情も変えず、パネルの前に座るオペレータの一人に念を押した。
「はい。キャップ。
 色々走らせてみましたが、まったく異常なしです」
 オペレータは振り返り、答えた。

「──よし」
 一瞬の逡巡(しゅんじゅん)もなくスミスは目前の非常用ブザーを押し、広い
艦内に時ならぬ警戒音が響く中、彼はさらにスピーカーのスイッチもONにした。
「──クルーに告ぐ。クルーに告ぐ。緊急事態発生。
 全員ただちにヘルメットを着用し、まずは各自、居住スペースの酸素濃度
及び気圧を確認せよ。
 隕石の衝突または腐食により、気密漏れが起きていると思われる。
 アラーム装置故障のため、所定の手順に従い、班別に目視及び携帯用漏洩
発見装置により漏洩個所を探し出し、大至急補修せよ。
 修理班は、アラーム及び自動修復装置の修理にかかれ! 
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 田舎の飯屋では滅多に見られない「重たい金貨」が、手荒れの酷い掌の中で
ぶつかり合って澄んだ金属音を立てる。
「旦那、こりゃ一体?」
 女将は驚くと同時に、商売人らしい欲気の混じった感謝の笑顔を浮かべた。
「ウチの姫若様からだよ。それとも、ここにいる衆みんなに一杯ずつ飲ませる
には、これじゃ足りないかね?」
「いいえ旦那方。これだけあればうちの酒樽が二回は空っぽになる」
 ニコニコと笑った女将は、もらった金貨を胸に押し抱いて、そのまま奥の厨
房へ駆け込んだ。
 程なく彼女と倅はもてるだけのマグに安酒を満たして戻ってきた。
 歓声を上げたのは件の農夫達だけではない。店にいた客の総てと、店の外で
見物と決め込んでいた通りがかりとが、どっと駆け寄る。
「旦那方、ご馳になります」「若様ありがとう」などと言いながら、あるいは
何も言わずに只酒に殺到する人々の流れに逆らって、エル・クレール=ノアー
ルはブライト=ソードマンに引きずられる格好で、漸く店から出た。
 通りに出てからしばらくの間、ブライトは「愛想の良い従者」の顔のままが
に股で歩いた。背丈が普段より頭一つ分ほど小さく見える。
 仕方なくエル・クレールは「気の強い田舎貴族」の体で、背伸びをしつつ後
を付いてゆく。
 人並みがとぎれたと見るや、ブライトはひょいと細小路に曲り込む。同じよ
うに角を折れて入ったエルの目の前で、彼は背筋と膝をグンと伸ばし、背丈を
元来の大男のそれに戻した。
「やれやれトンだ無駄遣いをしたもンだ」
 大きく伸びをしてみせる彼の鼻先に、エルの掌が突き出された。
「出費をさせられたのは私の方です」
 女の手としては骨太だが、剣士としてはほっそりとした指が、きっちりとそ
ろえられている。
「あなたが掏摸の真似事をなさるとは存じ上げませんでした」
 彼女が真顔で言うので、怒っているやら、あるいは感心しているのやら判別
ができない。
「貧乏人丸出しの俺の尻からアレが出てくるよりも、同じ貧乏そうな形でもお
貴族様に見えるお前さんが持っているものって具合に見せた方が、それらしく
見えるってもンだろう?」
 ある種の正論をブライトは半笑いしながら言う。エルの表情は変わらない。
 ただ、彼が「掏摸取った」彼女の物入れを返して欲しいと主張している事は
確かだ。そろえられた指が掌が反り返るほどピンと伸びる。
 ブライトがその上に小振りな革袋を乗せると、エルは中を見ることもなく腰
帯に結びつけた。
「……言うことがあるンじゃないのか?」
 無言を通す彼女に、ブライトは少々意地悪そうな声を掛ける。
「状況を打開してくださったことには感謝しています」
 あの時、田舎者の従者のフリをしたブライトが、「姫若様は事の後先を考え
ずに飛び出すのが悪い癖」と言ったが、それは
『間違ってはいない』
と彼女自身が感じていることでもあった。そしてそれは
『おそらく、この人の本音だろう』
とも思っている。
 エルには件の「身分証」を出して相手を引かせる等という手段は、思いも寄
らないことだった。よしんばそれを思いついたとしても、あの体勢ではイーヴァ
ンの剣を押さえ込むのが精一杯で、腰袋から物を取り出す余裕はなかったのだ。
 だから彼の機転には感謝している。
 知恵の回り方が羨ましいとも思う。
 その方面の思慮が足りない自分が情けなくもある。
 それを彼に見透かされ、いつまでも子供扱いされるのが口惜しい。
 だからこそ、そんな風に考えていることを悟られるのは恥ずかしい。
 エル・クレールはクチを真一文字に引き結び、ブライトの顔を睨むように見た。
 彼女の「自己嫌悪」の深さに、ブライトは気付いていなかった。ある程度
「反省」はしているだろうと思ってはいるが、悩むようなことではないからだ。
 彼女が先走れば自分が始末する。それは彼にとって当たり前のことだった。
 特にああいった「事件の場」では、良い「作戦」にもなるから、むしろ焚付
けるような真似もする。
 だからブライトは軽い調子で、
「じゃあ、それで無駄遣いは、チャラ、ってことで」
「私は無駄とは思っておりません。あの騒ぎを収拾するには、幾ばくか金子を
出すのが一番良いことでしょうから」
「俺の飲代は渋るくせに」
 茶化すように言いながら、ブライトは感心していた。
『大分世間慣れしてきた』
 少し惜しい気もする。世間知らずのオヒメサマは世間知らずのまま自分の掌
中にしまっておきたい。
「それこそ無駄遣いです――それより」
 顔を上げたエル・クレールは、にこやかに笑んでいた。ブライトの背筋に、
何やら冷たい物が走る。
「私のお尻に何やら硬い物が当りましたが、あれは一体何だっだのでしょうね?」
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