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 ゜┗━┛         2006年07月01日号 通巻 186号 ┗━┛゜
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 初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の発行人、銀凰です。

 さて、今週号で流河晶さまの<夢つむぎ>は最終回となります。

 早速本日の会報をお楽しみ下さいませ。
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◇本日の目次…
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 ▲オススメメールマガジン&HP紹介
 ◆連載小説…流河 晶 夢つむぎ 最終回
 ◆連載小説…神光寺かをり クレール光の伝説・古の【世界】 第16回
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◇オススメメールマガジン・Webサイト紹介
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◇連載小説 <夢つむぎ> 最終回       作:流河 晶
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 その後も時々、僕は夢を見た。
 あるときは、僕そっくりなイーサと一緒の、ヴェガの輝くような笑顔。
 別の日には、モロスと赤毛の美女──多分奥さんだろう──のツーショット。
 ある月には、赤ちゃんを抱いた奥さんと、微笑みながら二人を見つめるモロ
ス。
 別の年には……誰かの結婚式。
 よく見ると、花婿はマステマだ。彼の奥さんは、やっぱり美人だったけど、
黒い翼の……魔族だった。

 初めのうちこそ、夢の中の彼らがうらやましかったけれど、あれから何年も
経った今では、そんなことは全然ない。
 彼らは自分で運命を切り開いて、幸せを勝ち取ったんだしな。それに僕だっ
て……こっちの世界での戦いってもんがある。彼らほどじゃなくても、そこ
そこ頑張ってるしさ。
 でもジイちゃんときたら、結婚の報告も、外国からの絵葉書一枚だけだった
くらいで、ここ数年は、日本にさえ帰って来てない。

 ……ま、モロスのことを考えると、ジイちゃんも奥さんのことでなんかあっ
たのかもしれない。
 今日は彼女も一緒に来てくれてるはずだから、訊けるかもしれないな。
 そう思いながらベッドで伸びをしたとき、ドアがノックされた。

「はい?」
 返事と一緒に、ドアが開いた。
「まあ、今起きたの? イサム。相変わらずね。
 やっぱり迎えに来てよかったわ、花婿が式に遅刻したら大変でしょう」
「……え、ライラ、もうそんな時間かい?
 ──わ。ホントだ、急がないと!」
 僕は布団をはねのけた。

 そう、僕も今日、結婚する。今入って来た女性、八歳年上で、しかもヴェガ
にそっくりなライラが、僕の奥さんになる。
 だから、今度は僕らの番だ。
 二人でつむいでいこう。ささやかだけど、僕らにしかつむげない夢を。

                                  
                           THE END.


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 お読みいただき、ありがとうございました。
 これはHPに連載中の小説、“紅龍の夢”<巻の一〜四>の試作品的なお話です。
 そっちの方は雰囲気が違っていて、かなりダーク入ってますが(笑)。
 本編(連載中)を読んでみたい方は、↓へどうぞ☆
 
  紅龍の夢 http://www12.ocn.ne.jp/~tower/

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┌───☆│電||子||書||籍||掲||載||無||料|☆───┐
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◇連載小説 クレール光の伝説・古の【世界】 第16回  作:神光寺かをり
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 エルはしかし、呆れながらもある種の期待を持ってブライトの「芝居」を眺
めていた。
 それは、彼女の目にグラーブ卿が、勅使を拝命するだけのことはありそうな
逸材であることに間違いはないと映っているからだ。
『確かに居鷹で、物言いには棘はあるけれども……。言っていることは理に叶っ
ている』
 その口ぶりが妙なほど優しげな事に薄気味の悪さを感じることもまた事実で
あるが、それでも『ただ者でない』のは間違いなかろう。
 ブライトがそれをどの様に言いくるめるつもりなのか知りたい。
『きっと、嘘でないけれども真実でもないことを並べ立てるのだろうけれども』
 エルは再度ため息を吐いた。
 同時にグラーブ卿も息を吐き出した。
「つまりあなたは何を言いたいのかしら?」
 もっと要領よく説明なさい、と言い、薄い唇に薄い弧を描かせる。
「つまりですね」
 ブライトは少しばかり首を傾げた。よくよく考えているという「振り」だろう。
「もしガップの殿様の書いたものなら、そんなに酷い話のハズがない。ガップ
の殿様の書いたものでなくても、殿様のお墨付きが本当なら、やっぱり酷いも
のであるはずがない。
 で、ガップの殿様が書いたものでもお墨付きを下さったものでもないってぇ
のなら、困ったことになるってことでやしょう?
 でも今ここには何もないんですよ、旦那。ガップの殿様のお墨付きも、お墨
付きでないっていう証拠も、どっちもない。
 だからここで結論を出すことはできない」
 ブライトは自信に満ちてはいるが小さい笑顔を頬の上に浮かべ、ちらりとエ
ル・クレールを見た。
 エルは渋々うなずく。
 それは、「主人の心中を代弁している『つもり』の従者が、自分の話しぶり
に不安を感じたので確認したところ、主人は従者の愚鈍さに呆れながらも間違
いがないことを認めた」といったやりとりに見えた。
 そのように思わせようという演技であり、現に回りの者たちはそのように受
け取ったが、実際はむしろ逆といえよう。
『任せておけ、口を出すな、同意しろ』
 これがブライトの笑顔が示すものであり
『勝手にどうぞ、言葉もありません、本当に困ったヒト』
というのがエルのうなずきの意味だ。
 その奥には、
『止めたところで無駄なこと。あの人は私ことなど子供扱いで、意見しても聞
き入れてくれないのだから』
という諦めじみたものが隠れている。
 不承不承ではあるが同意を得たブライトは、笑みを大きくしてグラーブ卿へ
向き直った。
「結論をお言いなさい」
 卿は相変わらず冷たく微笑している。
「中身を確認してからにしたらどうでやしょう?」
「あらすじは聞いているわよ?」
「それそれ、そこが難しいところでさぁ。
 芝居というのは、実際演じてみないことにはわからないモンだっていいますよ。
 例えば台本(ホン)に『愛おしげに微笑む』ってぇト書きがあったとしやしょ
う。それを10人の役者に演じさせても、みんな同じように笑ったりやしない
もンです。嬉しそうに微笑むヤツもいるだろうし、ちょぴっと涙を浮かるとか、
とろけるような色っぽさで笑うヤツもいる。
 つまりね、旦那。芝居ってぇのは台本だけで判断しちゃぁいけないモノなん
で。実際に幕が上がってから締まるまで、通しで見ないとホントウの事が見え
てこない代物なんですよ。
 ましてや、葉っぱも根っこも取っ払ったあらすじだけじゃ、何も判りゃしない」
「つまり、アタシは何も理解していないってこと? 言ってくれるわねぇ。」
 グラーブ卿は鼻先で笑った。
 ブライトは大仰にうなずいた。
「旦那だけじゃありあせん。オレっちも、ウチの姫若様も、ここの三文役者が
悪いかどうかさっぱり判っていない。だから悪いってのを確かめてから、踏み
つぶすなら踏みつぶしてしまえばいかがですか、ということで」
「正論だわね」
 グラーブ卿は冷ややかな視線をマイヨールに突き立てた。
 尻餅を突いたままの彼は、生唾を飲んで言葉を待った。
「それではマイヨール、あなた達のお芝居を一幕から終幕まで観ることにしま
しょう。……もちろん、客は入れない状態で、よ」
 マイヨールの白い顔に、さっと赤みが差した。
「それはもう、最初から特別席で見て頂こうと思っていた訳ですから」
「アタシは忙しいのよ、マイヨール。今すぐ幕を開けろと言いはしないけれど……
できるだけ早く結論を出したいの。お解り?」
「それはもう! すぐに一座の者に言いつけて、舞台をしっかりくみ上げさせ
ます。そうすれば明日の朝一番には……」
 腰を浮かせたマイヨールに、グラーブ卿は、
「遅い」
と一言投げつけた。
「忙しいと言っているのが聞こえなかったかしら? お前の言う明日の朝一番
には出立しないといけないの……帝都に向けてね」
「では……」
マイヨールは一瞬うつむいたが、しかしすぐさま飛び上がって、グラーブ卿の
足下にちょんと跪いた。
「今夕。夕餉の終わるころにお迎えに上がります」
 それだけ言うと、彼はまりが弾むかのような勢いで立ち上がり、駆け出し、
出て行った。
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