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┏━┫ ☆テキスト系創作メールマガジン 文芸同人 主婦と創作☆ ┣━┓
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┗━━┛            2006年01月28日号 通巻 164号 ┗━━┛
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 初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の発行人・銀凰恵です。
 本年もよろしくおつきあい下さいませ。

 「会員専用掲示板」ですが、利用される方がいらっしゃらないという
残念な状況が続いておりますので、とりあえず一端撤去させて頂きます。
 作品投稿はメールフォームからお願い致します。
 
 さて、今週号からくまのさまの短期連載「王子的日常」が始まります。
 流河晶さま、ならびに神光寺かをりはちょっとだけお休みします。
 では今週の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ▲オススメメールマガジン&HP紹介 
 ◆連載小説…くまの 王子的日常 第一回
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◇オススメメールマガジン&HP紹介
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  私はニューヨーク在住のワーキングマミー。
  ニューヨーカーの夫、日本からやって来たグランマを含める
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◇王子的日常 一首
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◆1◆
 バジルとチキンのサンドウィッチとアメリカンクラブサンド。そして、グレ
ープフルーツジュース。
 これが、江端千尋こと《星の王子様》のお気に入りのランチメニューだと、
ファンクラブでは認識されている。
 だから、「注文は?」と訊かれたら、真っ先にセルフイメージに合わない本
日のオススメ、中華丼(うずら一個増量)をメニューから削除すべきなのだ。
すべきなのだろうけど……。
「注文は? 本日のオススメは中華丼だよ」
「………………そうだね」
 実際には、かなり心がぐらついた。
「……バジルとチキンのサンドウィッチとアメリカンクラブサンド、ドリンク
はグレープフルーツジュースを頼むよ」
 俺は内心の苦悩など見せず、さわやかに言うと、注文カウンターのおばちゃ
んに食券を渡した。もちろん、完璧な王子様スマイルもサービスだ。
 ああ、今、俺は中華丼への愛を叫びたい気持ちでいっぱいだ。
 だというのに、後ろに並んでいたかの子の奴は、人が入学したときから食べ
たくて仕方なかった例のメニューを頼んだのだ。牛丼っ!
 嬉々とした表情で牛丼を――それもツユダク+温泉玉子付きで頼む幼馴染み
を、俺は心の中で罵倒する。
 君はおごりだからといって、今日という日にそんなモノを頼むのか? 緑な
す黒髪をふり乱して、牛丼をかき込む美少女というのは、ビジュアル的にどう
なんだい?
 ………………ふふっ。
 まぁ、それは尋ねるだけ無駄というものだ。藪小路かの子という人は、徹底
的に美的感覚が壊れているのだから……。
 それなのに、君は日舞の、それも有名な部類に入る流派の名取りなのかい?
 世の中、間違っているな。
 思わず出そうになるため息の代わりに、俺はブレザーの胸許に手を当てて、
息を吸い込む。ともすれば萎えそうになる気力を入れ直すために……。
 人の心など露知らず、かの子はいたってマイペースだ。カウンターから出さ
れたオプション付きの牛丼をトレイに乗せて、
「千尋さん、どうかしまして? 早く席に着かないと、食べる場所がなくなっ
てしまいますわ」
 それはそれは満足そうに微笑む。
 これは意訳すると、『とっとと、あたしのトレイを持たんかい』ということだ。
「ああ、そうだね」
 俺は自分と奴のトレイをウェイターのごとく片手で持つと、かの子に向かっ
て一礼する。
「どうぞ、お姫様。こちらへ」

 今日は休日にもかかわらず、満員御礼だ。制服姿の生徒より、ブレーカーや
ユニフォームを着た運動部の生徒が圧倒的に多い。――もちろん、一部のエリ
アを除いては。
 ああ、でも、彼女達は制服がユニフォームといえばユニフォームか……。
「どうかなさったの?」
 いつの間にか、足が止まっていたらしい。かの子が眉をはね上げて、俺をの
ぞき見ていた。
「いや、何でもないよ」
 言葉だけでなく、安心させるためにウインクをしてみせる。
 そうして、不自然にぽっかり空いていた窓際の席まで、かの子をエスコート
する。こんな人でも公認の『カノジョ』だから、こういったことをしてもカド
が立たないのだ。
 女同士でカップルも何もあったものではない。とは思うが、俺のカノジョの
座を争って血を見るのは一度で十分だ。
 かの子を『カノジョ』に指名したのは、他ならぬ俺だ。この人ならファンか
ら闇討ちされても、返り討ちにしてくれるだろうから、こちらとしても心配し
ないで済む。
 第一、表立ってかの子に対抗できる生徒は、少ないだろう。日舞の名取りだ
けあって、背中まである自慢の黒髪は艶やかで、平安時代ならそれだけで美女
として通るだろう。
 顔は全体的に小作り。大きいが奥二重の瞳は慎み深く、唇は桃の花のように
可憐で、うらやましいと兄さんは言っていた。
 それはタテマエの話だけど、ね。恋のライバルが綺麗で可憐なら、よけいに
腹が立つというものだろう?
 そんなわけで背中にぴったり張り付いてくる視線が、いつもより濃厚なのは
仕方がない。テーブルにトレイを置くと、イスを引いてかの子を座らせてやる。
「よかったですわね、こんないい席が空いているなんて」
「…………そ、うだね」
 あまりの棒読みセリフに、俺としたことが一瞬、言葉に詰まってしまった。
 かの子といるときは、うっかりすると地が出てしまうから、気を引き締めな
ければならないな。それはお互い様か……。
「では、いただきましょうか。まぁ、見て! 《星の王子様》、美味しそうな
牛丼だと思いませんこと?」
 優雅に笑った後、かの子は割り箸を口でパキンと割った。汁気たっぷりのご
飯を、苦労して少しずつ口に運ぶ。
 さすがに、今日はいきなりかき込むことはしないで、きちんと箸を使うつも
りのようだ。
 俺もグレープフルーツジュースを一口飲んだ。さわやかな酸味がイラ立って
いた気分をしずめるのに役立った。
 ふと、視線を横に向ければ、口許に苦笑いを浮かべている美少年が窓ガラス
に映っていた。
 そう、少年だ。悔しいが、俺は線が細いため、どう頑張っても青年が精一杯
だ。スーツが似合う大人の男にはなれない。
 それなら、せめて髪を切ろうと思った。あと数年しか、彼を模することはで
きないだろう。だからこそ、この役は完璧に演(や)りたい……。
「…………っぐぅ」
 断っておくが、うめき声はかの子のものだ。
 こめかみに青筋を立てながら、懸命に箸を使っている。牛丼を食べるのに真
剣になって、例のことをすっかり忘れているのではないか?
 と、俺が不安に思い始めた頃、
「それで、重要なお話って何のことですの?」
 こちらに水を向けてきた。
 これで、やっと本題に入れる。
「ああ、それは……先日の『ロミジュリ』が、殊(こと)の外、好評でね、ア
ンコール公演が決まったんだよ」
「んまぁ、それはおめでたいことですわ。だけど、当たり前ですわね。あれだ
け感動を与えてくれる劇は、なかなかありませんもの」
 嘘をつかないでくれ、嘘を。君はその日、日舞の発表会で学校を欠席しただ
ろうが。
「ふふ。君が相手役をしてくれるのなら、もっと素晴らしいものにしてみせるよ」
「まあ、《星の王子様》ったら……他にご執心の方がいらっしゃるくせに」
 かの子はぽっと頬を赤らめてみせる。
 こんな状況下でなければ、何か咽喉につまらせたのかと焦るところだ。おか
げで、セリフを噛んでしまった。
「まあね。部会長のおと……妹さんは魅力的だからね。だけど、子供相手に本
気にはなれないよ」
 ほぼ本音に近い言葉だから、感情を込めるのに苦労しない。
 そうそう、あの子はからかい甲斐があって退屈しない。保科部会長が可愛が
るのもわかる気がする。
「可哀想な方……まだ昔のことを忘れていらっしゃらないのね」
 いい調子にかの子のセリフが続く。
「もう、あの方のことは、忘れてもいい頃合いですのに……」
 そうだな。君ぐらいあっけらかんと過去を放り投げられたら、少しは生きや
すくなるんだろう。まったく、何も今日、牛丼を食べなくてもいいだろうに!
 痛くもかゆくもない腰をさすりたい衝動を、俺は必死にこらえる。
「かの子。俺はあのときから、アイドルの仮面をかぶる決意をしたんだ」
 身を乗り出して、かの子の手を握り締めた。
 おっと、危なかった。あと数秒遅かったら、「おばちゃん、おかわりっ」と
追加注文の手を挙げられるところだった。ここまで来て、雰囲気をぶち壊され
てはたまらない。
「《星の王子様》、手を…………」
 手をどけやがれ、と唇をぎりぎり噛みしめている姿は、はた目には深い悲し
みをこらえているように見えなくもない。
 ふふん、上出来だよ。
「アイドルという存在は皆のものなんだ。誰か一人のものになれないことは、
君なら先刻承知だろう?」
「そんな……………………」
 かの子は絶句する。おや、なかなかいい間を作るなと感心していたというのに――。
「………………」
「……………………ん?」
 なぜ、かの子は絶句したままなんだ?
 …………かの子?
 位置的に目配せはできない。テーブルの下から、かの子の上履きをつつけば、
即座にすがりつくような瞳を向けてくる。……なるほど。
 単に、次のセリフを忘れてしまっただけらしい。この人は演劇部員ではない
から、仕方がないといえば仕方がない。
 こういうときはあわてず騒がず、かの子のセリフを自分のセリフに組み込め
ばいいだけの話だ。
「『演劇にかける情熱を誰かに向けるのはどうか?』と君は言いたいんだろう?
 ああ、それはわかっているんだ」
 俺はかの子の腕を胸許に引き寄せて、切なげに見えるよう吐息をもらす。
 情熱という単語で、真っ先に心の中に浮かんだのは、アツアツの中華丼だった。
 ああ、あの真珠のようなウズラの玉子に、ぷりぷりのエビとイカの夢の競演……。
どうして、君は中華丼なんだ。
 なぜに、明日のオススメではなかったんだい? これもそれもあれも俺の運
命だというのかい!?
「《星の王子様》。わかっているのなら、いい加減に手を…………」
 利き手をつかまれては、食事は続行不可能だ。かの子は必死になって手を振る。
 ふふん、俺だって伊達に君の幼馴染みはしていないのだよ。それに演劇とい
う奴は、体力勝負の世界でもあるしね。
「今はロミオの人生を生きることができる。演劇が俺の心の支えになってくれ
ているから、心配は要らない」
 ほら、ここまでフォローを入れてやったのだから、キメのセリフぐらい自分
で言ってくれ。
 俺は三百六十度どこから見ても完璧な笑顔を作って、
「だけど、応援はして欲しいな」
 と、最後のセリフを言った。
「かの子も、海女日舞同好会も、『ロミジュリ』のアンコール公演を力いっぱ
い応援しますわっ!」
 ああ、君はまたセリフを取りこぼしたぞ。日時を言わないで、どうするんだい?
「ありがとう、かの子っ! 公演は十一月十一日、午前十一時からだよ、必ず
観に来てくれ!」
「当たり前ですわっ! くそったれ!」
 かの子は俺の首に、思い切り腕を巻き付けてきた。怨念のこもったそれを払
いのけて、注文カウンターに一発微笑めば――。
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