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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年12月18日号 ----
------------------------------------------------------ 通巻113号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、銀凰@水道管が破裂しちゃった! です。
 年末にイタイ出費が……トホホ。
 
 それはさておき、早くも今年の最終号の発行となりました。
 今年一年おつきあい下さいましてありがとうございました。
 よろしければ来年もおつきあい下さいますようお願い申し上げます。

 では、今週の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ 天狼戦記−華−
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 ◆連載小説…神光寺かをり フツウな日々
 ◆このメルマガを読んでの、あなたの感想を聞かせてください◆
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 赤猿の両手が六花の首に伸びる。
 まさにそのとき、
『――我慢ナラヌハッ!』
 彼女の脳裏で聞き覚えのある女性の声が弾けた。鼓動が瞬時に跳ね上がる。
恐ろしい速度で拍動する心臓を、そこで膨らんでいく力を、自分では止めるこ
とができない。
 身内に自分のものではない、圧倒的な力の塊を抱え込んでいることを六花は
今、知った。知ったばかりだが、それのすべてを識っている。
 最大限の力を発揮できる場所も、誰一人として知らないはずの弱点も何もか
も……。六花の意識があるうちは、上手く力を発揮することができないことは、
彼女自身が教えてくれた。――ただし、緊急時を除いては。
『ソナタノ血ヲ一部解放スル』
 四肢を縛り付けていたビニールヒモが、音もなく焼け切れた。拘束がほどけ
ると、六花の身体は猿と間合いをとるべく背後に跳ぶ。踵が畳に着く前、赤い
右腕が胸許に伸びてきた。
 六花は躊躇なく、右の手刀で手首から先を切り落とした。
 どす。
 本体から切り離された異物は、それでもまだ死なない。五本の指だけで畳を
這う。赤い蜘蛛のようだ。篠原の命によって、六花の顔に向かって襲い掛かっ
てくる。
『…………児戯』
 彼女は表情を変えず、赤い蜘蛛を踏み潰した。
「そうくるかい、柄にもなく情けをかけたのがいけなかったね」
 従使が身もだえて苦しんでいる様子に、篠原が初めて悪意に満ちた素顔を現
した。
『女ヨ、身ノホドヲ知レ』
 女性の警告は六花にしか聞こえないらしい。従使に攻撃の命を発する篠原に、
『ナラバ、己ノ得手デ死ヌガヨカロウ』
 言うが早いか両手を上げた。そこにある掴めるはずのない空気を掴んで、彼
女が何を形成したのか……。手の平が伝えてくる感触から、六花は細身のナイ
フだと悟る。
「いやよっ、やめて! 篠原さん、早く私から逃げて!」
 六花は叫びながら、もう一人の自分が前方に放ろうとするナイフの柄を懸命
に握っている。全力で彼女に抗っていたが、精神力も筋力も完全に向こうが勝っ
ている。
 このままだと、篠原の胸に見えないナイフが沈んでしまう……。
「……何を言っているんだ、お前は?」
 対峙している朱色の女、篠原はこちらのやり取りを怪訝そうな顔で眺めてい
る。隻腕となった赤毛の猿は主の後ろに控え、目ばかり爛々と輝かせている。
『コノ女ハ、ソナタノ敵ゾ』
 なぜ、六花が自分の邪魔をするのかわからない、という風だ。
 違う、篠原さんは私の大切な人。この私の思いに反する意識は要らない。こ
の身体は私のものなら……。
「もう誰も傷つけないで!」
 篠原が傷つくところは見たくない。もう他の誰かが苦しんだり、泣いたりす
るのも見たくなかった。そのくらいなら、このナイフを自分の身体に突き立て
た方がマシだ。
 だから、私はあなたなんて要らない!
『………………』
 手の中のナイフは泡と消え、全身の筋肉が弛緩した。六花はその場に座り込
む。戦意がないことを証明するべく、両手を畳に付けて頭を垂れた。
 身内で響く声が、次第に力なく小さくなっていく。これがどんな結末を招い
たとしても、六花に悔いはなかった。
 お父さん、私には私の成すことがあったのかもしれないけれど……。
「あれだけ啖呵を切っておいて降参かい? ま、いいさ。《太夫》、やれ!」
 篠原が命じると、六花の前に上半身だけの猿が泳ぐように移動してくる。す
ぐ首くくられるかと思ったが、赤い従使は予想外の行動に出た。
 自分の右手首の断面から、畳にぽたりぽたりと垂れる血。それを左手ですく
い取ると、そのまま六花の頭に置いたのだ。
 ――彼方の主と近しい娘よ。
 外見からは想像もできない、穏やかな初老の男声が耳に入ってきた。これが……
赤毛の猿なのか? 目を見張る六花に、敵たる従使は濁った眼(まなこ)だけ
でうなずいてみせる。
「……あなたの言葉がわかる。…………その腕、痛かったでしょう? ごめん
なさい」
 ――おかげで腕の術が解けた。もう一つの《徴》が消えれば、我も主の許へ
還ることができよう。
「……《徴》?」
 六花は小首をかしげる。いつか、どこかで聞いたことがある言葉だと思った。
「――《太夫》、お前は何をやっている!」
 甲高い声が二人の対話を切り裂いた。
 赤毛の猿は慌てることなく、悠々と背後を振り返った。何を見たものか、顔
色を失った篠原はそれ以後、口をはさんでこなかった。
 ――此方の女は仮の主なれど、望みを果たさねばならぬ。
「…………あなたもかわいそう」
 ――それが真たる主を失った従使の務め。そなたの望みを申せ、最期に夢を
見せてしんぜよう。
 闇が広がった刹那、極彩色の洪水が彼女を襲う。猿の赤毛、血液の赤、篠原
が着ているセーターの朱色がぐるりと混ざり合った。
 桜が観たい……お父さんとお母さんと桜の花が観たい。
 佐野家の花見の場所は、毎年、決まっている。道の両端にしだれ桜植えられ
ていて、薄桃色のトンネルになる町の名所だ。そこから近隣の小学校の校庭を
見下ろすのが、六花も両親も好きだった。
 ――さようか、されば…………。
 純粋な赤色に一滴、白い色が加えられる。そう、六花の大好きな桜色だ。
 土手では風がそよいでいる。満開の桜は風が吹くたび、薄い花びらを散らし
ていく。
 私はここに来たかったの……。
『………………六花、早くおいで』
『――……お父さん、待って』
 遠い背中を追いかけて、父親の腕に抱きついたとき、六花の姿は小学一年生
にまで戻っている。
『お母さんはどこ?』
『お母さんは……先に行っているんだよ。父さんは六花を待っていたんだ。ほ
ら、見てごらん。桜は散り際がとても美しいだろう?』
 桜を褒め称える父親の横顔は、言葉に反して重く暗いものだ。
『お父さんが悲しい顔するから、六花はさくらきらい』
 幼い六花が頬をふくらませると、
『そんなことないよ、お父さんもお母さんも桜が花のなかで一番好きなんだ』
 宙を舞う花びらを器用につまみ取った。父親はそれを六花の胸ポケットに入
れては、また同じことを繰り返す。
『じゃあ、なんで? なんで、悲しいの?』
『昔からたくさんの想いが込められて、植えられているからだよ。だから、綺
麗に咲けば咲くほど悲しくなってしまうんだね』
 幼い彼女にはほとんど意味をなさない言葉の羅列だったが、それでも、父親
の言いたいことはわかった。
『さくらはいっしょうけんめいなのにかわいそうだね』
『そうだよ、桜はとても悲しい樹なんだ……』
 父親はこちらを見下ろしている。ふいに、眼鏡の奥の目を細めると、花で霞
んだ空に両手を掲げた。
『……お父さんにはこれぐらいしかできない』
 大量に捕らえた花びらを、娘の胸ポケットにしまい込む。
『…………お父……さん、何してるの?』
 どこかで建物がきしんだような鈍い音がした。音が大きくなるにつれて、六
花は胸が苦しくなってくる。プールの授業で、上手く息継ぎができないときの
ことを思い出した。
『これはおまじないだよ。花びらが六花の悲しみを吸い取ってくれるように……』
『――かなしくないよ、六花は今とっても楽しいよ』
 六花は隣りにいる父親に身体を寄せた。
 空の彼方から自分を呼ぶ声がしたが、あまり興味を惹かれなかった。今はた
だ、眼前に広がる桜の風景に心を和ませていたかったのだ……。
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◇連載小説 フツウな日々               作:神光寺かをり
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 広い畳の部屋の真ん中に赤い絨毯が敷かれていた。絨毯には模様が描かれて
いた。よく見るとそれは表面に印刷してあるのではなくて、いろいろな色の糸
を組み合わせて織り込んであっるのだ。
 龍が床をじっと見ていると、「トラ」が小さな声で言った。
「遠い国で、女の人や子供が織っているんだ」
 その声は、夏前にあの川原で話していたときとまるきり同じ調子だった。
 だから龍も、あのとき止まるきり同じに、
「ふぅん」
と答えた。
 絨毯の上には、スチールの脚にガラスの天板を乗せた低いテーブルがある。
テーブルの周りには座椅子が2つ。部屋の隅に座布団が何枚か詰まれている。
 背もたれが大きくて肘置きが付いた、座椅子は、多分Y先生の旦那さんの場
所だ。座るとテレビが真正面に見える位置だから間違いない、と龍は確信した。
 なにしろ龍の家でも父親はテレビの真正面に座っているのだから。
 その左側に、籐の背もたれが付いた座椅子がある。テーブルの辺の真ん中か
らからちょっとずれた位置に置かれているから、これはきっとY先生の席だ。
 この位置なら旦那さんがテレビを見る邪魔にならない。ちょっと中心からず
れているのは、旦那さんの湯飲みにお茶をつぎ足すのに便利なように、だろう。
 龍はテーブルの前でちょっと考えた。先生と旦那さんの「定位置」に座る訳
には行かない。だから空いている二カ所のどちらかに座ればいいのだけれど、
どっちを選んだらよいのかまでは解らない。
 迷っていると、「トラ」は部屋の隅の座布団塔に駆け寄って、頂上から2番
目と3番目の座布団を引き抜いた。
 彼女は二枚の座布団は先生の席の対面に並べて置き、テレビから遠い方へぺ
たんと座った。
 龍はその隣にちょこんと座った。
 背後から甘い匂いが漂ってきたか思うと、その匂いの元が、白いレースのテ
ーブルクロスの上に、トンと置かれた。
 きれいに皮を剥かれ、櫛形に切られた大ぶりの桃。
 緑色のプラスチックの柄の小さなフォークが添えられているそれは、龍が普
段食べるものよりも、一回り大きいように見えた。
「大きい!」
 「トラ」の分のお皿を持ったY先生の肩がびくんと持ち上がるほどの大声を
出してしまった龍は、慌てて自分の口を両手で押さえた。
 その掌の下で、言い訳じみた疑問をつぶやく。
「さっき先生が、今年は実が小さいって言ってたのに」
「大きくても変な形の実はお店には売れないから、自分の家で食べちゃうんだ
よ」
 答えたのは「トラ」だった。
「桃って、みんな同じような形してるんじゃないの? 売れないほど変な形の
桃なん見たことがない」
「それはそうだよ、そういうのはお店には並ばないのだもの。見たことがない
のが当たり前だよ」
「それはそうだけど……」
「葉っぱの影に隠れていると、日陰の所は赤くならなかったりする。太い枝に
寄っかかっていた実は、枝の当っているところがふくらまない。ちょっと風の
吹いた拍子にどこかにぶつかって傷が付くと、跡が残ったりそこだけ凹んだり
する。そういうのは、見た目がきれいでないから、お客さんが買ってくれない。
お客さんが買わないから、お店の人も仕入れない」
 「トラ」は一息に言った後、一度唇をぎゅっと結んだ。そしてうつむいて息
を吸い込むと、付け足した。
「他のモノと違ったところがあると、みんなに嫌われちゃうんだ」
「じゃあこの桃は、嫌われっ子の桃だね」
 龍は言うなり、一番大きな櫛形切りの桃を口に運んだ。
 桃は少し堅かったが、噛むと途端にとろりと溶け、口の中はたちまち甘い汁
で一杯になった。
 ジュースに変わってしまった桃の実は、するするすとんと喉の奥に落ちていっ
た。
「ふわぁあ!」
 龍の口からは感動の声と、桃の甘い匂いがあふれ出た。
 彼は矢継ぎ早にお皿の桃を口に運んだ。そうして、飲み込むたびに桃味の息
を吐き出す。
 お皿はあっという間に空っぽになった。
 龍は果汁が弾く小さな光の反射を、名残惜しくじっと見つめて、言った。
「僕は、嫌われっ子の方が好きだ」
「ありがとう」
 小さな声で「トラ」が言う。彼女は黒目がちな瞳を潤ませて、にっこりと笑っ
ていた。
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発行人:銀凰恵
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