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--------------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇----------
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------------------------------------------------ 2004年10月16日号 ------------
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◇ご挨拶
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初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、銀凰です。
さて、先週予告させて頂きましたように、今週は「半角80／全角40字」の体裁でお送り
致します。
（メルマガ天国での発行分のみ、規約に基づき半角76字/全角38字となります）
先々週（70/35字）、先週（60/30字）、今週（80/40字）を見比べて頂き、どの体裁が
読みやすいか、今一度アンケートにお答え頂ければ幸いでございます。
アンケートは本文の一番最後にございます。ご協力お願い致します。
それでは今回の作品をどうぞ〜。
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◇本日の目次…
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▲メルマガ相互広告
◆連載小説…くまのサマ 天狼戦記−華−
◆連載小説…神光寺かをり フツウな日々 今週はお休みです
▼アンケートコーナー
▲【PR】コーナー
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◇連載小説 天狼戦記−華− 作：くまの
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三月二十三日未明、神楽家第三十五代目当主《檜樹（かいじゅ）》こと、神楽檜一郎が
死去した。
前日の夕暮れには、神楽本家の館を旋回していた烏翠達が消えたばかりでなく、通いの
使用人も二名行方知れずとなっている。西陣家へは既に情報が漏れていると考えていいだ
ろう。神楽家は早急に一族総会議を開き、次期当主を決定する必要に迫られていた。
その日の夜半には、全国に散り散りになっていた神楽一族の親族代表が結集し終えた。
昨日まで檜一郎に一樹、桜子、六花、柏木と少数の使用人だけのひっそりとした館が、華
やかなりし昔を取り戻したかのように活気に満ちている。
それは主に仕える身の上の従使、使用人も同様らしい。
他の人狼から主を護るため、従使は威嚇の気配を濃くし、逆に使用人は客人に対して開
放的な気持ちになっていた。日々の仕事に加え、味にうるさい客人達への食事の世話、客
室の清掃と、こなさなければならない雑務が山のようにある。目が回るほど忙しいはずな
のだが、元来、働き者の彼らは喜々として仕事に励んでいる。
もちろん、柏木も優秀な執事の役目をそつなくこなしていた。
親族と一口にいっても、直系と傍流とでは能力差がありすぎる。彼らの格式に合うよう、
誰からも抗議がないよう館内の客室を割り当てるのは、彼にしかできない芸当だ。ただし、
前当主の葬儀の件に関しては滞りなくというわけにはいかなかった。
人狼の死は伝統的に葬儀は行われない。昔ならば、山深くに亡骸を放置して自然の摂理
に従い、朽ちていくのを待っていればいい。人間社会に身を潜めるようにして生きている
現在はそうもいかないが、大抵の人狼の場合はその伝統を守っている。
飼い猫が突然に姿を消すように、人狼は己の死期を悟ると自然、死に場所を求めて姿を
消すのだ。血の濃い者ほど、その傾向が強い。己が亡骸を呪術に利用されるのを防ぐため
だ。
前当主、神楽檜一郎の場合は長年の延命術による身体的疲弊により、各器官が使い古し
のボロ切れのようになっていた。最期のひと呼吸の後、魂魄が完全に抜けた老体は、みる
間に水分が抜けていった。一番初めの親族が当主の許にかけつけたときには、ただの褐色
の粉の山と化していた。
それがこの場にある。館二階にある二十畳の議室、檜の一枚板で作られた長テーブルの
中央に、骨壺に納まった前当主がうやうやしく置かれてあるのだ。真の議長として、議席
についた神楽一族の代表達を見回しているかのようだ。
死してなお主の威光を借りるか、柏木？ 小賢しい結界師が考えそうなことだな。
本家の人間として議席の上座に着き、ことの次第を見守っていた一樹は眉根を寄せた。
それでなくとも、着慣れないスーツ姿で肩が凝るというのに不快なこと極まりない。黒
ネクタイの結び目を少し緩めると自然、彼の唇から吐息をもれた。
ちょうど正面に座っていた中年女性が、こちらに向けて感嘆のため息をもらす。彼女の
右隣りを陣取っていた深見が、その様子を見て我がことのように満足気に顔をゆるませて
いるのが見えた。
少し見ない間にまたこの男は太ったな。
無言の賞賛にも一樹は無感動だ。彼の関心と憎悪は別のところにある。
隣りにある桜子を伺えば、時折、からまった髪の毛をいじりながら退屈そうに欠伸をも
らす。次期当主など決まりきった会議など、開く意味もないのだといわんばかりだ。
しかし、耳だけはしっかり柏木の一字一句をとらえていることを一樹は知っている。
彼女の黒いワンピースは喪服だが、襟に飾られた純白のレースが、英国女王の正装を連
想させた。自分の結婚が政治的戦略に利用されるのを恐れ、一生独身で過ごした高潔の処
女王。
やはり我が妹に似ている、と一樹は微苦笑をもらす。
「――となり、一樹様と桜子様と六花様とで等分なさることになります。次は館内の……」
疲れも見せず、朗々と遺書を読み上げていく柏木とは対照的に、部屋は水を打ったよう
な静けさだった。ただ一人、深見を除けば誰も遺産のことなど気にしている人狼はいない
だろう。
「……《檜樹》様は次期当主に、神楽六花様の名を一番に上げられておられます」
ここで初めて場にどよめきが起こる。議室に集められた親族達は、暗い顔をしながらも
内心、久々の再会を喜び合っていた。彼らは次期当主が一樹、桜子のどちらに転ぼうが神
楽家の行く末は安泰だと考えていたのだ。
六花が次の当主になる？ 桜子の間違いじゃないのか？ あの老獪なお祖父様がそんな
愚かな決断をするだろうか……いや、ないな。
――ならば、まだ俺にも勝算があるということか？
一樹の思惑と周囲の困惑をよそに、椅子を倒さんばかりの勢いで桜子が立ち上がった。
「お祖父様がどういうお考えで、こんな愚かな遺書を残されたのかはわからないけど……。
あたしは自分の手で当主の座をもぎ取るだけよ。《狼頭戦（ろうとうせん）》でね」
《狼頭戦》とは当主の座をかけた争いだ。六花のように、力ない当主が生まれるのを避
けるために作られた神楽家独自の制度である。異議を唱える者は、その血の濃度に関係な
く、新しい当主に戦いを挑むことができる。
その際、従使の使役は不可能だ。人狼の《術》も使用できない結界の中で、純粋に人狼
の身体能力が示される。どちらかが死ぬより屈辱的な屈服の姿勢をとるか、命尽きるまで
行われる野蛮な儀式だ。
桜子のように血の気の多い人狼のためにあるような儀式だと、一樹は端（はな）から馬
鹿にしていた。まさか、現実に行われることがあるなど想定していなかったのだ。
時代の移り変わりにより形骸化した《狼頭戦》は、意図的に選ばれた挑戦者が新しい当
主に膝を折ることで終わってきた。たまさか真に勝負を挑む命知らずもいたが、名指しで
当主となる人狼が脆弱なはずもない。
結果として、娯楽の少ない人狼達の恰好のイベントとなっていた。
――おお、それでこそ桜子様だ。
――《狼頭戦》が生きている間に、この目で拝めるとは……。
――俺は一樹様と桜子様の対決を楽しみにしていたのだがなぁ。
無責任なささやき声が美しい兄妹、桜子と一樹を取り巻くように起きる。己が当て馬で
あることは一樹自身よくわかっているため、やはり周囲の動向に表面上は無反応だ。
桜子は当主としては若すぎる。ただ、それを補って余りある美貌と人狼の能力、そして
カリスマは周知の事実だ。祖父の無尽蔵な力と謎の従使の知識を受け継げば、今よりもっ
と強大な力を発揮することができるだろう。
さらに重要なことは、――今は一部だけが知る事実だが――彼女は《天狼》の可能性が
高いのだ。
「では、伝統に従いまして《狼頭戦》は一週間後の正午、この神楽本家の屋上にて執り行
われます。異議のある御方は、どうか一両日中に私までお申し出下さいますよう」
穏やかな表情で柏木は部屋を見回す。気だるげに挙手をして、重たそうに身体を持ち上
げたのは深見だった。
「このお嬢さんは《血の不適合》だと、前当主自らがおっしゃったそうじゃないか。変性
もできないでどう勝負するんだね？」
議室にいた人狼達の目が一斉に、末席で縮こまっている黒髪の少女の許へと向けられた。
恐ろしいほど統制のとれた動きだった。ここにいる者達は六花の顔を見るのも初めてなら
ば、彼女が《血の不適合》だという事実も初耳だろう。
一樹が気になるのはなぜ、深見はこれほどまでに本家の内情に通じているか、というこ
とだ。どうやら、彼が館に潜り込ませた鼠（間諜）は一匹ではないらしい。
「次期当主と名指しされた御方に、《狼頭戦》を拒否する権利はございません。もちろん、
ハンディキャップも認められません」
穏やかだが有無をも言わせぬ迫力で、柏木が言葉を続ける。
だが、《狼頭戦》を拒否する権利がないのは、当主になると覚悟を決めた者だ。当主の
座を放棄すれば、附帯するすべての権利を放棄とすることができる。
深見は六花にそう説明すると、「ねぇ、お嬢さん」と気味の悪い猫なで声を発した。一
樹が吐き気を催したのと同じタイミングで、床を凝視していた六花がぴくりと薄い肩を震
わせる。
「失礼は承知で言われてもらうが、私やこの場すべての人狼達の未来を背負うには、荷が
重すぎるんじゃないかい？ ここらで、よく考えてもらいたいものだよ」
親族の誰もが彼女の醜態を期待していただろう。
「……………………」
さらり、ワンピースの肩口で切り揃えられた黒髪の揺れが激しさを増す。六花が泣き出
すのだと一樹は思った。
「……私は……あの…………誰も死んで欲しくないんです。――だから、そのお話をお受
けします」
それは議会が始まって以来、初めて彼女が口にした言葉だった。
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主婦と創作ではオリジナルなテキスト作品の投稿を募っております。
自作（必須）で、テキスト形式メルマガで発表できる作品でしたら、小説から俳句まで、
ジャンルは問いません。
奮ってご投稿下さい。
…でもとりあえず、規約には目を通して下さいな。
★投稿規約のページ →http://mm.9no1.gozaru.jp/03.html
★投稿用メールフォーム →http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html
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それではアンケートです！
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☆【第二回】主婦と創作の体裁についてご意見を下さいませ
URLをクリックするだけで投票できます。
投票はお一人様１票限り、締め切りは２３日の午後６時です。
◆今まで通り半角70字/全角35字で
┗ http://clickenquete.com/a/a.php?M0000228Q0001174A1c795
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○結果を見る
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締切：2004年10月23日18時00分
協力：クリックアンケート http://clickenquete.com/
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ご協力、お願い申し上げます。
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