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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年09月18日号 ----
------------------------------------------------------ 通巻100号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹の銀凰です。
 早いものでと申しますか、ようやっとともうしますか、当メールマガジンも
通巻100号の発行を迎えました。
 これもひとえに読者さまが読んでくださり、支えてくださっているからなし
えた数字でございます。 有難うございます。
 さて、100号だからと申しましても、なんぞ特別なイベントを行うこともなく、
いつも通りに今回の作品をどうぞ〜。
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◇本日の目次…
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 ▲文芸&おすすめサイト紹介
 ◆連載小説…くまのサマ  「天狼戦記−華−」 
 ◆連載小説…神光寺かをり 「フツウな日々」 
 ◆主婦と創作WebサイトのURLが変わりました。
 ▲【PR】コーナー
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【文芸&おすすめサイト紹介】
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 六花とて列記とした神楽本家の一員だ。時が緊急を要する場合、私情を交え
ることは許されない。一樹は即座に、遠見の術《天眼》を行使する。術の有効
範囲を半径十キロに広げたところで、六花を小脇に抱え、ビルの屋上から屋上
へと飛び移る赤毛の大猿の姿を捕らえた。
 志摩家の従使、朱猿だ。呉家の玄熊(げんゆう)に次いで物理的な破壊力を
持つだけでなく、高度な幻惑術を操る従使である。これは珍しいものを見たと、
一樹の横顔に壮絶な笑みが浮かぶ。
 彼の中で、すべての符号がピタリと重なった瞬間だった。
「《小銀》、いるか? 六花はともかく、朱猿は生かして捕らえたい」
 ――何しろ、奴には《徴》がつけてあるんだからな。
 主の眼前に現われた小さな兎は、
『はい、御命のままに……』
 と、深々と頭を垂れる。
「いや、だが、《砕破(さいは)》は使うな。六花の身体に傷がつく」
 《砕破》は従使の中で、最も妖力の弱い兎影だけに与えられた自爆行為の
《術》である。まさか《天狼石》なる《神石》が、その程度の爆発でダメージ
を受けるとは思えなかったが、一樹は厳かにそう命じた。
 ――可愛がっていた兎が、細切れになるところなど見せなくてもいい。それ
に……。
 これ以上、六花の心のケアなるものにつき合わされるのも、一樹はまっぴら
だった。
* * *
 戦場となった生命保険会社の屋上では、ぐったりと横たわる少女と、その傍
らで片膝をつき戦闘態勢を取る美少年の姿があった。さらに、看板上で忘れ去
られたような白い塊が一つ。
 一樹は自分を取り囲む一匹の獣と、ダークスーツの三人の男達を見回して、
「お前達はただの人間だな。西陣の者か? それとも、志摩の残党か?」
 そう問うたところで、もちろん応答はない。
 あるいは…………。
 一樹の脳裏を横切ったのは、他の誰でもない、自分を誘い出した張本人であ
る。六花は気絶しているのではなく、おそらく朱猿の《術》によって意識を混
濁させられている。無抵抗状態の彼女の内部から、例のモノを摘出しようと考
えるような慎重かつ冷酷な人狼は、自分の他には一人しかいない。
 まさか、深見とはな……。
 深見にとって計算外だったのは、今現在、一樹が六花を助けようとしている
ことだろう。
 何のために、そんなことをする? こいつに恩を売るためか? 自分に問い
掛け、彼は馬鹿馬鹿しいと鼻でせせら笑った。
 《金狼樹》によれば、《神石》は《天狼》しか、主と認めぬと言っていたか
らな。
 今、強引に取り出したところで、《神石》に反応した桜子に横から奪われて
は話にならないのである。まだ、その時期ではない。
「おい、朱猿、ここに来い!」
 一樹は朱猿を呼んだ。
 だが、いかに《徴》を付けたとはいえ、他家の従使に《名無し》では拘束力
が弱い。朱猿はその場で身もだえするばかりで、歩み寄る気配を見せない。つ
いには隣接するビルに飛び移り、気配を完全に絶ってしまった。
 ふん、それだけ格が上ってことか?
「さあ、早くしろ。お互いに時間は無駄にできないはずだろう?」
 お前達の相手をしている暇はない、この不敵な挑発に、特殊警棒を持った黒
服の男の一人が反応を示した。
「――うりゃあああぁ」
 六花を庇うためガラ空きになった一樹の背後に回る。ずん、という鈍い衝撃
が脳幹まで響いてきた後、彼はコンクリートの地面に吹き飛ばされた。
 もちろん、受け身を取ったのでダメージはそれほどでもない。額からしたた
り落ちてくる血を袖でぬぐって、無言の男達に告げた。
「――お前らは必ず殺す。死体は烏翠達に片付けてもらおう」
『――一樹様……』
 馴染みのある冷風が、さらりと彼の頬をなでた。鈍い痛みを訴えていた後頭
部の傷が癒えていくのがわかったが、一樹は振り向きもしない。
『申し訳ございません……』
「言い訳は聞かない。早く、アレの主を突き止めろ」
 ほぅと、優しいため息を一つもらし、《雪華》はビルの谷間に消えた。
「この餓鬼が大人しくしやがれ!」
 先手を打ってきた男が胸倉をつかんでくる。細身の一樹は軽々と引きずり上
げられるが、顔に焦りはない。彼の目の前には、無防備にさらされた左胸があ
る。
「隙だらけなんだよ、お前達は」
 一樹の忠告ともとれる発言が、その耳に届いたかどうか……。次の瞬間、男
の心臓に狙いを定め、人差し指を突っ込んでいる。引き抜いた指先には、まだ
痙攣を起こす心細胞の一部がこびりついていた。
「………………ぐはッ!」
 不浄な血反吐を避けるように、一樹は身を地面に投げ出す。まだ、状況判断
できず、呆然としている次の獲物のみぞおちを掌で突く。あまりのあっけなさ
に、素直に殺してしまうのが惜しい気がして、つい手加減をしてしまう。
「さぁ、知っていることを教えてもらおうか? 深見はどこまで知っているん
だ?」
「ゲヘッ…………」
 腰が抜け、腹這いなった男の背中を、彼は片足で地面に張り付ける。
「六花のそばにいた中年の女はどうした? 殺したのか? 吐かなくてもいい
ぞ、その代わり一分ごとに、お前の内臓を一つずつ取り出してやる」
 一樹は独りで戦うことには慣れていたが、誰かを守りながら戦うということ
には、まったくの不慣れだった。《雪華》がそばにあれば、多少は違ったのか
もしれないが……。
 暴力と血の匂いに酔いしれ、一樹は完全に六花の存在を忘れてしまっていた。
 男の心臓を鷲づかみにし、悦に入っていた一樹が我に返ったとき、六花の細
い首筋にナイフが突きつけられていた。
「《小銀》、手を出すな!」
 主の制止の命を振り払い、小さな兎は綿毛のような体を男の顔に張り付けた。
『申し訳ございません、一樹様、六花様』
 幼児じみた愛らしい声が、一樹の脳裏を過ぎった。
 ――馬鹿が!
 一樹は反射的に前方に飛び出し、木偶のような妹の上に自分の身体をかぶせ
た。乳白色から白銀色に変化し、ぶくぶくと膨れたそれは、ものすごい量の風
と熱をばら撒き、そして、弾けた。
 臆病な性質だが、決して恩知らずではない兎影は、成すべきことを成したの
だ。
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◇連載小説 フツウな日々               作:神光寺かをり
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 油臭くて黒い煙が目の前に漂っている。
 鼻の穴のと喉の粘膜がちくりと痛んだ。龍はくしゃみと咳をほとんど同時に
した。どちらも息を強制的に吐き出すようなものだ。彼は肺の中の空気を小出
しに吐き出し続け、そのためしばらく空気を吸い込むことができなかった。
 もっとも、できることなら吸いたくないほどそのあたりの空気は辛い物だっ
たから、龍の体が示した反応は至極当然だ。
 それでもしばらくすると、くしゃみと咳はどうにか収まった。
 龍は大急ぎで着込んだばかりのしめったシャツの裾をぐいと持ち上げて、鼻
と口を覆った。布越しに吸い込んだ空気からは、排ガスのニオイが少し薄れて
いる。
 いつだったか、学校でやった避難訓練の時に、煙を吸わないようにするには
ハンカチをしめらせて鼻と口に当てると良いと教わったのが、役に立ったよう
な気がした。
 ただ、シャツを湿らせた布が溜池の水だった物だから、排ガス臭の代わりに
生臭い水苔のニオイが加わっていて、結局あまり気分の良い呼吸はできないの
だけれど。
 とにかく、何とか息ができるようになった龍は、あたりをきょろきょろと見
回した。
 川をたどってたどり着いたこの場所が、一体どこなのかさっぱり判らなかった。
 できるだけ早くあのお墓と溜池から離れたいと思っていても、家に帰る道順
だって当然のように判らない。
 道路沿いに少し進むと(そっちに進んで良いのか悪いのかもちっとも判らな
かったのだけれど、とりあえず歩いて)、押しボタン式の信号が1つ立ってい
た。
 信号には見覚えのある市章と、見たことも聞いたこともない地名の書かれた、
青い看板がかかっている。
 龍は一瞬ホッとして、すぐにゾッとした。
 少なくともここが自分の生まれ育った市の範囲のなのは間違いない。
 でも、何度か周りの小さな町村を飲み込むように合併したりしているから、
同じ「市内」でも「市街」に住んでいる龍の全く知らない場所が、むしろ知っ
ている範囲より広々と広がっている。
 端っこの方は相当な山奥で、空気がとんでもなくキレイだから、昔は病気の
人が町から離れて入院する特別な病院があったらしい。
 そのあたりは今でもトカゲやヘビだけでなく、タヌキやイノシシや、時々ク
マだって出ると聞いたことがある。
 今いる場所の周りを見ると、どうやら家もあるし、第一太い道路を車がびゅ
んびゅん行き交っているくらいだから、タヌキは兎も角クマは出ないだろう
……たぶん。
 龍は信号の柱にもたれかかった。クマの出る心配はなくても、家に帰れない
心配は残る。
 もう一度あの池に戻って、土手を下って、川底に下りて、ちょろちょろした
流れと一緒に歩いてゆけば、自分の住んでいる町まで帰れるのは、間違いない
し何よりも確実な方法だ。
 でも。
 龍は今ほんの少し歩いてきた道を振り向いた。トラックが震えながら向かっ
てくる。
 あの場所に戻るのは嫌だ。
 彼は、あの場所に戻らずにあの川に戻る方法を探して、またあたりを見回した。
 道路と、家と、果樹園と、田圃が見える。
 川らしい場所は、見えない。
 冷静になって考えてみれば、道路と家と果樹園と田圃より一段低いところに
水路が造ってあることや、そういった目の高さが合う物の影に埋没して低いと
ころが見えづらくなっていることに気が付いても良いのだけれど、このときの
龍は冷静とか沈着さといった性質を求めるのには幼すぎた。
 川が消えた。たどってきた「道」が消えた。でもたどり着いた場所はそこに
ある。そしてそこから逃げ出す方法が判らない。
 トラックが通り過ぎる。なま暖かい排気ガスが濡れたシャツとズボンを通り
抜けながら、体温を奪ってゆく。
 彼の脳みその中で、たどり着いた場所……姫ヶ池は、緑色の呪いになっていた。
 膝ががくがくと震える。龍は信号機の柱にすがりついたまま、ずるずるとそ
の場にしゃがみ込んだ。
 ゼブラゾーンの上に、巨大な黒い車輪が止まっているのが見える。
 高い場所から、しわがれた大人の男の声が怒りを帯びて降り注ぐ。
 頭を持ち上げた龍の鼻の穴からさらりとした鼻水が流れ出して、粉塵が積もっ
たアスファルトの上に水玉模様を描いた。
 緑がかった薄い黄土色が、彼の目の前でゆらゆらと滲みながら揺れていた。
 その黄土色の、農協のマークと電話番号が書かれたドアが勢いよく開いて、
やっぱり農協のマークの付いた緑がかった薄い黄土色の帽子がそこからぬっと
突き出た。
 皺のある白い顔が、優しく笑っていた。
「Iセンセエ……」
 龍は自分の魂が頭のてっぺんからしみ出てしまったのではないかと思うくら
い、体中から力が抜けてゆくのを感じた。
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