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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年07月03日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻90号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、大変遅くなりました。
 自分の書いたモノが休載になっているかどうかすら判らなくなってしまうほ
ど混乱していた自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、銀凰です。 トホホ。
 それでは、今回の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ  「天狼戦記−華−」23回
 ◆連載小説…神光寺かをり 「フツウな日々」19回
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 首筋を噛まれたらしい甘い痛みに、うたた寝をしていた彼女はまぶたを開い
た。と、普段ならば見えるはずのない己の鼻面が視界に入り、ますます目を見
張る。四つ足で立ち上がって周囲の様子を伺うが、日の出前のほの暗い穴倉に
は、獣の寝息だけが響いている。
 私は………………ワタシはダレ?
 なぜだかわからない違和感に、彼女が小首をかしげたときだった。背中に軽
い衝撃が走る。体当たりしてきた小さな獣のせいで、彼女はまたしても床に転
がった。
 おかげで、わかったことがある。
 ワタシは狐ダ。
 今、自分の尻尾にじゃれついてきているのも、同じ匂いを持つ薄茶色の北の
狐だ。悪戯が好きで母親を困らせてばかりいる、大好きな兄だ。
 そう、ここは安全と家族と彼女のすべてがある巣穴だ。優しい母親と大切な
弟達がいる。
 確認できると同時に、彼女は懐かしい気持ちで胸がいっぱいになる。
 次から次へと脳に伝達される情報のなかには、雄大な北の大地の移ろいも含
まれていた。
 兄の誘いに乗り、彼女が巣穴から顔を出せば、すぐそこに芽吹きを始めた山
の姿がある。
 彼女が初めてみる春だった。――いや、彼女はすでに知っている。淡桃色の
山桜が遅い春の到来を告げると、すぐに短く激しい夏が来る。深い樹々の間を
ぬうように草花が色を競い合えば、秋には甘美な蜜を含んだ果実がたわわと実
る。
 そして、晩秋の山々が目も覚めるような原色をまとった後に、白い季節がやっ
て来るのだ。
 彼女が待ち望んだ冬だ。山の動物達はほとんど眠りにつき、大地も固い氷雪
に閉ざされる空白の時間。好物の野鼠も昆虫も思うように獲れず、樹皮で食い
つなぐひもじい過酷な日々。
 それでも、彼女は白い季節が一番好きだった。贅を誇る雷鳥のように、自分
の冬毛も純白に生え変わればいいのにと思っていた。

 ………………ワタシはダレ?
 巣穴の奥まで運ばれてきた鼻をつく不快な匂いに、彼女は目を覚ました。体
を伏せた姿勢で目と耳だけを動かし、その場の安全を確認する。
 ワタシは金の女王、山の長ダ。
 心配ない、自分は何を恐れているのだろう?
 幾度も冬越しをして、彼女は金茶の毛並みと豊かな尻尾を持つ立派な成獣と
なっていた。この辺りで自分に逆らえる野狐はいない。なのに、これはどうし
たことだろう? ヒトの匂いごときで、この胸騒ぎは何事だ?
 彼女は愛しい子供達を呼び、応える声の数が足りないことに気がついた。や
んちゃな仔狐が一匹、巣穴から遊びに出てしまったらしい。残った子供達にき
つく言い置いて、彼女は彼が残した匂いを追い始めた。
 始終、首筋の毛がちりちりする。危険を知らせるシグナルに彼女は時折、足
を止めて澄んだ高い空を仰いだ。
 空中散歩する鳥の何羽かが彼女に気がつき、仔狐の行方と彼女の無謀さを歌っ
た。
 ……ソンナコトハワカッテイル。ワカッテイル…………。
 大きく息を吸い込むと、彼女は息の続く限り雪に覆われた樹々の間をひた走
る。金の光が飛ぶようだ。その間も全神経を耳と鼻に集約させ子供の気配を探
る。
 幼い仔狐に知恵はない、自分の足跡に合わせて後戻りする技術や雪の固い場
所を選んで歩くなど、考えも及ばないらしい。ただひたすら前をゆく足跡に彼
女は苦笑する。
 子供達にはそろそろ狩りを仕込まねばならない、と考えを巡らせていた。ま
だ、それだけの余裕はあった。彼女はこの周辺を仕切る野狐の長であったが、
同時に山に生きるすべての野生動物を取りまとめる役目も持っていたからだ。
 そのときの彼女に恐れるものなど、何もなかった。足が遅く知恵のまわらな
いヒトなど、用心すればいい程度の生き物だった。
 だからこそ、彼女はヒトの匂いが充満している山裾まで降りて来た。彼ら山
の動物達が使う道筋で、仔狐の気配をつかまえることができたとき陽は落ちか
けていた。残してきた子供達が心配になる。
 ……………………。
 かすかな物音に頭を上げれば、枯れ枝の先に目指すものがあった。愛する我
が子はヒトの作った竹の篭に押し込められ、それごと樹に吊らされていた。火
薬と鉄の嫌な匂いがなくとも、明らかに罠だとわかっていたが、彼女の誇りが
樹に向かって足を前に出させた。
 ガシャリ。突如として雪面から飛び出してきた鉄の牙の名前を、彼女は知ら
ない。もがけばもがくほど、肉に食い込む刃に堪えきれずに悲鳴をあげればヒ
トがやって来た。
 牙を剥き出しうなる彼女をせせら笑い、そのヒトは黒光りする長い棒を白い
腹に押し当ててきた。
 ワカッテイル…………ワカッテイタ。
 永遠にも近い一瞬の後、高い空を破る猟銃の音と熱い衝撃が全身を覆った……。

 ――………………ワタシはダレ?
 彼女の意識はいったん闇に潜り、自然の理を超えてやや乱暴に覚醒を促され
た。最初に結んだ像は、小枝のように細いヒトの子の姿だった。雪面に片膝を
つく体勢で、同じ大きさの自分を抱えてくれている。
「僕はお前の敵じゃない。敵はもうやっつけてやったよ、わかる? 僕はこれ
から命を共にする、お前の主人だよ」
 真っ直ぐな視線が自分に向けられている。遥か昔、母親が教えてくれた恐ろ
しいヒトとは違い、むしろ自分の愛しい子供達に似ていると彼女は思った。
「僕の名前は神楽一樹。そうだな、お前は白狐だから名前は《雪華》だ。さあ、
言ってごらん」
 不思議なことに、ヒトの子の言葉は容易に彼女にも理解できた。白狐という
単語に自分の手足を見やれば、あれほど憧れてやまなかった雷鳥の白がある。
『セッカ……せっか《雪華》? カグラ……カズキ、が《雪華》の主?』
 まだ、彼女の頭の半分は朦朧としていた。次第に明瞭となっていく意識の中
で、金の女王としての記憶は薄れていった。代わりに湧き上がってきたのは、
目の前の主への忠誠心と愛情だった。
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独特な文学ジャンル「私小説」があるがゆえに、「小説を書く=自分探し」と
混同しているアマチュア作家(含む私)が多い日本。…まれにプロにもそうい
う人がいるけど……誰とは言わないが。
良い文章を書く為に、ひとまず「自分探し」の旅をやめてみよう。そして新た
な世界を生み出そう。
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◇連載小説 フツウな日々               作:神光寺かをり
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『あれ、38人だったっけ』
 二年生の時に1人転入生が来て、四年生の時に1人転校して……。
 何度数えても、
「38人」
 龍の口から漏れた数を、校長先生がどう思ったのか、龍には判らなかった。
「君は、友達を作るのが上手いんだね」
 そう言って、校長先生は安心したような、それでいて困ったような笑顔のま
ま、二、三回うなずいた。
 時計の長針がかちりと動いた。天井のスピーカーが振動して、静かにチャイ
ムの音を響かせる。
「ああ、もうお昼だね」
 校長先生は金色の腕時計をちらりと見た。
「もう!?」
 思わず声を上げた龍だったけれども、そのすぐ後で、
「あれ、まだ……?」
まるきり反対のことをつぶやいた。
 今日は朝から色々なことがありすぎて、ちゃんとした授業は1時限だってやっ
ていない。ちゃんとした休み時間だって、1時間目と2時間目の間にあったぐ
らいで、それだって教室から図書室への移動時間で大半が潰れてしまった。
 45分間緊張して、5分間ホッとする繰り返しをちゃんと4回やらないと、給
食の時間が来た感じがしない。
 図書室から運び出されて治療が終わったのもついさっきのようだったし、
「トラ」が救急車に乗せられるまでの時間も、校長室にいた時間だって、そん
なに長くなかったように思う。
 だからまだお昼の時間だという実感がわいてこないのだ。
 だけれども。
 今日は朝から色々なことがありすぎて、なんだかあっという間に時間が過ぎ
てしまった気もする。
 朝早くにお婆さんが学校に押しかけてきたり、突然担任の先生がいなくなっ
たり、校長先生が授業をしたり、図書室で(また)倒れたり、「トラ」が救急
車で運ばれたり。
 何年分ものビックリを経験したみたいで、とても半日しか時間が経っていな
いとは思えない。
 龍はおなかをさすった。
 おなかが減ったという感じはしない。
 救急車が来てくれるまで本当は相当時間がかかっていた。泣き叫び続けて喉
が潰れるくらい長いこと校長室にいた。
 本当の時間が判らなくなるくらい混乱していて、龍の腹時計は長子が狂って
しまったのかもしれない。
「今週は、給食当番かな?」
 校長先生の質問に、龍は首を横に振って答えた。
「それなら、もう少しゆっくりしていっても構わないね。なんならここで給食
を食べていっても良いんだよ」
「え?」
 龍は小首を傾げた。
「自分の教室以外で給食を食べても良いんですか?」
「どうしても教室にいるのが嫌な人は、担任の先生が許してくれればそれで良
いんだよ。誰にも何も言わないで勝手に出かけて行ったり、図書館やお手洗い
で食べてもらっちゃ困るけれども」
 校長先生の言葉は、龍にとっては衝撃的だった。
 彼にとって、給食の時間というのは、クラスのみんなと一緒に競争したりゲ
ームしたりすれば嫌いなおかずだって平気で食べてしまえるくらい楽しいもの
だった。
 給食を教室で食べるのが嫌な子供がいるなんて信じられないし、教室以外で
食べることそのものを想像することができない。
 龍はぽかんと口を開けて、校長先生の顔を見た。
 校長先生は優しく笑った。
「君はとても優秀な小学生だね」
 龍の口はますます大きく開いた。
 国語も算数も社会も理科も音楽も図工も、がんばっても4が取れるかどうか
微妙なところで、体育はがんばっても5がぎりぎりで取れない程度の成績だ。
 取り立てて苦手なことがない変わりに、取り立てて苦手なこともない。怪我
をして入院するまでは遅刻も欠席もしなかったことと、毎年夏休みの自由研究
で毎日天気を観察し続けて大きな模造紙に一覧表にまとめたこと以外では、褒
められたことなんて一度だってない。
 優秀なんて言葉は、自分とはぜんぜん全く関係ないものだった。
 なんと返事をして良いのか判らず、まるで酸欠の金魚のように口を開けてい
る彼を見て、校長先生はほんの少し辛そうな顔をした。
「君は教室に戻った方が良さそうだ」
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 チェックはしているつもりなのですけれど…
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