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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年05月29日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻86号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、銀凰です。
 それでは、今回の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ  「天狼戦記−華−」
 ◆連載小説…神光寺かをり 「フツウな日々」
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 ──ダンッ。秘密の書庫を守っていた樫材の内扉があっけなく開け放たれた。
その外側にあったはずの大扉はさらに堅牢な上、防術も施されたものだったが、
その者によってすでに破られていた。
「うふふ。こんなところにいたのね。ねぇ、真さん遊びにいきましょうよ」
 一樹の正面、内扉の前で車椅子に座しているのは小柄な美女の姿だった。い
つものように、年齢にそぐわないほど派手やかな朱色の着物に身を包んでいる。
 いや、あの人の着物の裾にある染みは、爪にこびりついた茶色いものは、血
ではないだろうか……?
「……母様、お身体をどこか傷めましたか?」
 一体、誰のものだろうと訝しがる一樹の問いかけに、
『申し訳ございません。二尾狐(にびこ)たる私ごときでは、お止めできませ
んでしたわ』
 従順たる従使がそっと二の腕を押さえる。血液こそ流れない従使だが、白い
袖の下はかなりの深手に違いなかった。一樹は知らず眉根をひそめていたのだ
ろう、見る見るうちに弥生の瞳に涙が浮かぶ。
「だって、その獣が邪魔をするんだもの。弥生と真さんの邪魔をする者はみん
な大嫌い。宮路も笹乃も……みんな大嫌いっよ」
 音もたてずに車椅子を操り、夫だと信じる息子のそばにぴたりと寄りそう。
 使えるのは不明瞭な未来予知の夢だけ。それも、確率は半々という情けなさ。
己にコンプレックスを抱くほど無能力者だった弥生は、清い精神と引き換えに
強力な力を手に入れた。コントロール不能のその力は、本人の意識が錯乱すれ
ばするほど力を増していく厄介なものだった。これが、《血の不適合》者の行
く末。
 一樹の胸にちかりと不穏な光が走った。
「実は、あなたにお聞きしたいことがあるのです。答えていただけますか?」
「なぁに?」
 あどけない童女のごとく弥生は答える。
 彼女は本来ならば、次期当主の資格を持っている。あの祖父のことだ、娘が
幼いの時代から当主に必要な知識を叩き込んでいったはずだ。狂気に支配され
ても、そんな重大なことがそうそう簡単に抜けるはずがない。
「《天狼》が双子の片方として生まれるのはなぜですか?」
 単刀直入に一樹が問う。
 以前から、知りたいとは思っていたが、聞き出したところで自分の地位が変
わるものではないと一樹は諦めていたのだ。
 だが、今はどんな情報も力になる。桜子より自分が誇れるものがあるとした
ら、人狼としての経験と持ち札の数ではないだろうか?
「……秘密なのよ。お父様が怖いわ」
 弥生がはた目からもわかるほど、身震いをしている。今もって、当主への純
粋な畏れが彼女を支配しているらしい。
 すがりついてくる母親の髪をなぜて、一樹は肩越しに微笑む。《雪華》が小
さくうなずき、弥生の前に雪で作った白い花を差し出した。
「きれいでしょう? そう、あなたみたいですね」
 一樹が甘くささやけば、獲物は白磁器のような頬を染め、まどろむような瞳
の色に変わる。
「そう、この花を見てください。ゆっくりと十まで数えて……そう、一、二、……
三……四、五……」
 白い花は匂いに催眠効果のある雪草。かくりと頭をたれる弥生に、一樹は先
程の問いかけを繰り返した。
『この者からは、何の情報も得られぬ』
 弥生の唇からこぼれ出たのは彼女の言葉であって、そうではなかった。人を
上から見下した傲慢で不遜な口調は、祖父瓜二つだった。
 弥生の潜在意識にまでブロックがかけてあるとは、さすがに当主だと一樹は
うなるしかない。
 彼女の内に在るのは、もしかすると祖父の従使かもしれないな。
 意識体だけの従使など、一樹は聞いたこともないが、彼らの存在を自分の生
命力に還元できる当主なら、それぐらいできそうな気がした。
『我が主の直系血族、神楽一樹よ。お前が知りたい答えをその血によって与え
よう』
 《天狼石》に関する答えが得られるというのなら、何も意識が弥生である必
要はない。一樹は聴覚に意識を集中した。
『肉体を司る《天狼》と力を司る《天狼石》は、二人で一つ。どうやら、お前
は思い違いをしているようだが、《天狼石》は《神石(いし)》のことではな
い。《天狼》たる桜子の身体では支えきれぬ力を受けるためもうけられた、双
子の片割れの別称が《天狼石》だ』
「《神石》か…………初めて聞く」
 情報の嵐に、先ほどの《雪華》並みに意識が混乱しそうになるが、一樹はか
ろうじて平静を保つ。
『ふん。《神石》とは《天狼石》の力を吸収し、《天狼》の力を増幅させる媒
体に過ぎぬ。《天狼石》の支配下においては石つぶて以下だ』
 では、《神石》が一樹の考えていた《天狼石》のことなのだろう。
 《天狼》が《天狼石》を握って生まれてくるというのには、二重の意味があっ
たのだ。《天狼》が《神石》を握って生まれてくるということと、《天狼》と
《天狼石》が双子であるということ。
 一樹の考えていたことのすべてが、逆なのだ。《天狼石》である六花の莫大
な力の源泉を《神石》が吸収し、今の《血の不適合》の状態に陥っている。な
らば、一樹が六花から《神石》を奪うのは、彼女にとっても都合がいいはずだ。
 彼女の身の内から《神石》を奪えば、人狼としての能力を発揮できることに
なるのだから。
「ひとつ聞きたい。《天狼石》の力を吸収した《神石》を手に入れることは、
《天狼》の力を手に入れるのと同じことなのか?」
『愚か者めがっ! 《神石》は《天狼》の命ある限り、他を主とは認めぬ。彼
らは互いに共鳴し合い霊力を増幅していく、もう一組の双子なのだ。よって、
《神石》がその力をすべて放出すれば《天狼》もまた滅する……きゃはは…………
が道理……』
 最後の語り声は、弥生の金切り声と混じり合う。弥生の激しい感情が従使を
意識の底に追いやろうとしているのだ。
「最後に教えてくれ……」
 一樹にとって一番の疑問は、なぜ、六花の体内に《神石》があったかという
ことだ。《天狼》が《神石》を握って生まれてくるのではないのか?
「…………………………っうふ」
 どうやら、老獪な従使の意識は完全に消え去ってしまったようだ。弥生は焦
点のズレた瞳のまま車椅子から身を乗り出し、
「……きゃははは……うふふ」
 弥生は息が触れ合うほど近くにある息子の唇に、自分のそれを合わせた。濃
厚な血と脳漿の味に一樹は吐き気がした。
 これ以上は無駄だった。人目につかないうちに、この色鮮やかな鳥をカゴに
戻さなければならない。
 一樹は作戦の変更を余儀なくされた。あの従使によれば、六花の体内から取
り出した瞬間、彼女の意識で抑えられていた《神石》の力が爆発することにな
る。
 六花を殺して《神石》を掌中に収めても、桜子が本来以上の《天狼》として
の力を得てしまうのなら、一樹にとって何の得にもならない。
 桜子によく似た女の首筋にやんわり唇を押し当てながら、一樹の脳裏にある
考えが閃いていた。
 ――だとしたら、俺に残された道は一つだ……。
「あなたに頼みがあるのですよ、母様」
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◇連載小説…「フツウな日々」             作:神光寺かをり
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 龍が座らされた黒い革張りのソファは、ふんわりと柔らかだった。柔らかす
ぎて、座った人間が体全体がすっぽりと埋まってしまい、身動きができないく
らいだった。
 校長先生の椅子の向こうは校庭に面した窓だ。ガラス窓は開けられてい、青
い網戸がぴたりとしめられていた。
 それでも細かい網の隙間から、乾いた砂埃の匂いが流れ込んでくる。
「風が強いねぇ」
 校長先生はのんびりとした声で言う。
 龍は何も答えなかった。下を向いたまま、できるだけ遠くのことを考えよう
としていた。
 校舎の外、校庭の向こう、道路の先、川の反対側。
 龍の背筋に電気が流れた。
 石ころだらけの川原。薄茶色く濁った水が、轟々と音を立てて流れている。
木も草も皆、川から逃れようと体をねじ曲げて立っている。
 怖いとか、悲しいとか、辛いとか、そういった簡単な一言では表せない感情
が、彼の頭の中に満ちた。
 それは雨の日のあの川原の濁流と同じ色をしている。
 あふれた感情が、涙と鼻水になって目と鼻からぼろぼろと流れ出た。
「うわぁああ」
 泣きながら叫んでいるのか、叫びながら泣いているのか、龍自身にも判らな
かった。口から出ているのが言葉なのかタダの声なのかも、さっぱり判らない。
 泣いて涙を腕や手で拭き、鼻水をすすり上げ、わめいてよだれを飲み込んで、
そしてまた泣いて目をこすって、鼻水を吸い上げて、よだれを飲み込み損ねて
咳き込んで。
 ルーチンワークと化した所作を、何度繰り返したのかも、やっぱりさっぱり
判らない。
 喉の奥になにかどろりとした異物がまとわりついて、それでいて口の中がか
らからに乾き、目と鼻の回りが赤く腫れ上がってひりひりと痛む事を自覚しは
じめたときには、校長先生の背中から差し込む日の光がすっかりオレンジ色に
変わっていた。
 斜めに差し込む光をまぶしいと感じた次の瞬間、龍は 涙も声も、すっかり
出なくなっていることに気付いた。
 泣けないと判った途端、妙に落ち着いた気分になってきた。
 それでもまだ頭の中では茶色い川が勢いよく流れてはいるのだけれど、水か
さは減っていて、瞼だとか鼻の穴だとかの堤防を越えなくなった。
 腫れ上がったまぶたを何回か瞬かせ、目尻の辺りをひりひりさせる残った涙
をげんこつでごしごしと拭き、鼻の中でずるずると大きな音を立てながら深呼
吸をすると、背筋をピンと伸ばした。
 向かいの一人掛け椅子で、校長先生が微笑んでいた。
「つまり、こういう事だね。
 君はI君……いや、『トラ』君とY川の岸で出逢った。お互い苗字も教えな
いうちに親友になって、君は『トラ』君のことを先生や両親よりも信用するよ
うになった。
 今まで学校では一切顔を見ていないから、多分違う学校の子だろうと思いこ
んでいたら、突然校内で逢ってしまったから、とても驚いた。
 その上、『トラ』君は救急車で運ばれてしまったものだから、何がどうなっ
ていて、自分はどうしたらいいのか、さっぱり判らなくなったわけだ」
 龍は目を見開いた。泣いたりこすったりしたせいで、相当腫れて痛いのだけ
れども、目尻が避けるほど見開いた。
 自分と『トラ』だけの秘密の筈だった。……いや、秘密にしていたのは自分
だけで、『トラ』にとっては秘密のことではなかったのかも知れない。
 だとしても、なぜこのことを校長先生が知っているのだろう?
「校長先生はエスパーですか?」
 校長先生は少しビックリしたようすで、二回ほど瞬きをしたが、すぐに元の
優しい笑顔に戻って、言った。
「君が今言ったことだよ。もっとも、泣きながら言ったことだから、ちょっと
聞き取りづらかったし、話が前後していたからまとめるのが大変だったけれど
も」
 頭の中を流れていた濁流が消え失せた。
 後に残ったのは、澄んだ清流の中にぽつんと独り立っている、清々しいよう
な寂しいような妙な気分だった。
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