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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年03月20日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻79号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、お待たせ致しました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹の銀凰です。

 それでは、今回の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ  「天狼戦記−華−」
 ◆連載小説…神光寺かをり 「フツウな日々」 
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 モデルにでもなれそうなスタイルのよい小学生が、古びた商店街の目抜き通
りを疾走していた。
 よくよく見れば、彼の愛らしい顔立ちに無数の傷が走っているのがわかるだ
ろう。上質な服のあちこちに黒い染みがつき、半ズボンから伸びた足は泥と血
で汚れていた。
「二十、三……か。それまで、持つかな?」
 十二羽目を数えたときから、神楽一樹(かぐら かずき)の意識は朦朧とし
ていた。
 唯一の武器である銀の短剣は、この戦闘で刃こぼれし、血脂でほとんど使い
物にならない。この短剣は彼の力によって増幅され、より強大な威力を発揮す
る特別製だが、それでも限りはある。
 今回のような場合、敵の得物を次から次へと奪い、武器を持ち替えるという
ことができない分、苦戦している。
 一樹は写真店と居酒屋の間の狭い袋小路に滑り込んだ。この辺りは彼の熟知
した場所だ。積み上げられた黄色いビールケースを飛び越えると、一樹は目の
前の壁を蹴りきれいに宙で一回転する。と、次いで入ってきた黒い物体の急所、
首の付け根に短剣を突き立てた。
 切れなければ、刺せばいいのさ。
 ──ギュギャァァァ。
 一樹とほぼ同じ大きさの巨大なカラスは、翼をばたつかせ直後、動かなくなっ
た。この場合、低空飛行が仇となった。いくら頑健を誇る西陣家の烏翠といえ
ども、子供の体重と落下の際の重力が掛け合わさった攻撃を受け、地面に叩き
つけられてはひとたまりもない。
「あと……三羽か。《雪華》! 《雪華》! どこにいる!」
 何度目かの召喚にも、やはり白狐は姿を現さない。一樹は次の攻撃に備えて、
片膝をつき呼吸を整える。自分の影を映すアスファルトに汗が、ぽたりと落ち
た。
 この小さな神楽家の次期当主候補は、幼い頃より暗殺には慣れていた。今、
心を支配しているのは、死への恐怖より焦りの感情の方が強い。
 変性すれば自身の鋭い牙と爪が有力な武器となるが、幼い彼はまだ身体をコ
ントロールする術を知らない。そもそも、現状態で体力の消耗が激しい変性を
行うことは自殺行為に等しい。
 第一、こんな町中ではそれすらも不可能だ。
 それに引きかえ、この烏翠達の群れは通行人達の目には見えていない。客観
的にみても、圧倒的に不利な状況だった。もっとも、この鼓膜をつんざく鳴き
声ですら感知できず、奇異な視線を自分に向けている人間。彼らの助けなど、
一樹は端(はな)から期待していない。
 新品に等しかった黒いランドセルは、彼らの総攻撃を受けて引き裂けている。
もう盾としても使い物にならない。一樹はそう判断し、肩を抜くとビールケー
スに向かって投げ捨てた。
 小学校の正門を出たときから、一樹は不穏な空気を感じとっていた。いたる
場所から、従使の敵意に満ちた視線も感じていた。
 だが、それはいつものことで、迎えの車も待たずに一人で歩き出してしまっ
た。
「あいつらも、バカじゃないってことかな……」
 烏翠のくちばしに神経毒を仕込んであるのかもしれない。出血したわりに傷
は浅いはずだが、一樹の足はもう自分の体重を支えられない。
 ──ガァァガアア。
「……上か!」
 振り仰いだ青い空に、群れの中でもとりわけ図体の大きい烏翠が空中旋回し
ていた。それに従うように二羽が周りを飛び交う。
 ボス格の烏翠と一樹、お互いに目が合った。完全な殺意。一樹は素早く足許
の烏翠から短剣を引き抜いたが、それが彼の精一杯だった。自分の頭に狙いを
定めて、いっせいに烏翠達が急降下してくるのを感じながらも身体が動かない。
 ガッ。一樹の背後で激突音が三度した。間一髪のところで、白装束の女が小
さな身体をさらったのだ。数秒前まで彼がいた場所には、大きな黒い残骸が三
つ転がっている。
「《雪華》、お前、今……までどこ……にっ」
 毒のため回らない舌を必死に使い、一樹は女を叱咤する。
 今は何より治療が先だ、とわかっていても、一樹の心は怒りで爆発しそうだっ
た。必死の呼びかけにも答えず、主の危機を見過ごすなど何のための従使かわ
からない。
『一樹様、申し訳ございません』
 自分の腰を抱きしめたままの人型の白狐、《雪華》の豊かな銀髪が目下で波
打つ。一樹は治療にかかる霊狐の肩が、小刻みにゆれているのに気がついた。
「……そんなに怒っていないぞ」
 決まり悪くなって、彼はより一層ぶっきらぼうに言い放つ。
 心を許せる従使はこの《雪華》だけだ。彼女だけが、一樹のために心を痛め
てくれる。従使は涙がこぼれないのだけれど、確かに今、泣いてくれている。
 従使は主の身を完全に守るため、冷静に状況を見極める判断力と、時として
主人のためには味方さえ手にかける冷酷さも必要になるのだ。だから、《雪華》
の生前より引き継いだ母性本能や感情過多な性質は欠点でもあるのだが、そん
なことはどうでもよかった。
『一樹様……これは西陣の手のものではございません。……《檜樹》様の烏翠
にございます』
「お祖父様がっ?」
『檜樹様は本日、正式に桜子様を次期当主として公表いたしました』
「そうか。お祖父様は、もう僕には用がないんだ……ね」
 心が急速に冷えていくのが、自分でもわかった。
 努力ではどうしても、越えられないものがあるとしたら、それは天賦の才能
だ。妹の桜子は生まれた瞬間から、異彩を放っていた。
『一樹様っ!』
 《雪華》の声に緊張が走る。一樹は振り向かずとも、烏翠の殺気を察してい
た。あの大烏翠だけは、致命傷を受けながらもどうにか生き残っていたのだろ
う。自分を守るために《雪華》が《障壁風》を作り出そうとしたが、一樹はそ
れを手で制した。
 アスファルトに散らばった氷の粒を蹴散らしながら歩み寄ると、
「お前は地獄に落ちろ」
 一樹は表情を変えず、右手で大烏翠の頭部を鷲づかみにした。ゆっくりと握
力を上げていく。圧力で飛び出した眼球が、真夏の太陽に焼けたアスファルト
に落ちて蒸発した。
 地を這うような低い断末魔は長く続き、悲痛な面差しで眺めていた《雪華》
は、呪文のように「一樹様の命には背きません」と繰り返していた。
 そうだ、もっと苦しめばいい、お前にはその義務がある。
 とうとう大烏翠の頭は砕け散り、肉片は氷のカケラに、したたり落ちる血は
蒸留水に変わっていく。冷たくて気持ちいい、と一樹は顔に塗りつけた。
「だけど、僕は死なないよ…………絶対にね」
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◇連載小説…「フツウな日々」            作:神光寺かをり
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「君にとって、図書館は鬼門なのかも知れないわね」
 保健室の先生が、笑いをこらえた困り顔で言う。
 龍には「キモン」が何なのかはわからなかったのだけれど、多分あまりよい
意味の言葉ではないんだろうと想像した。
 今回はおでこにこぶが一つできただけで、前のような派手な怪我はしなかっ
たけれど、気を失ったり怪我をしたりしているのに代わりはない。
 それは間違いなく「よいこと」ではないし、それが起こった場所を指してい
う言葉なのだから、やっぱり「よい意味」であるはずがない。
 授業時間の保健室は耳が痛くなるほど静かだった。静かすぎて、保健室から
見て学校の敷地の反対側の端にある体育館で弾むバスケットボールの音まで聞
こえてくる。
 おでこに湿布を貼ってもらった龍は、
「家には連絡しないでください。こないだの怪我で、お母さんは心配している
し、お父さんは怒っているから」
蚊の鳴くような声で言った。
 保健室の先生は、やっぱり困ったような笑顔をして、それでもうなずいてく
れた。
 後ろ手にドアを開けて、龍は後ずさりで廊下に出た。
「ありがとうございました」
 ぺこりと頭を下げる。そのまま頭を上げずにドアを閉め、彼は回れ右をした。

 顔を上げると、目の前には四角い管のような廊下が、まっすぐ続いていた。
 保健室は図書館のある新築校舎とはべつの、ちょっとだけ古いコンクリート
の校舎の、一階の端っこにあった。
 同じ階には養護学級以外に「生徒が常にいる教室」はない。あるのは職員室
と校長室、応接室に事務室、鍵の掛かった倉庫や滅多に使われない理科準備室
ばかりだ。
 このフロアの空気がひんやりとしていて、重たいほど静かなのは、きっと生
徒というある種の「熱源」と「音源」が極端に少ないからに違いがなかった。
 心なしか暗い四角いチューブの中を、龍はぽつぽつと進んだ。
 煙草の匂いのする職員室の前を抜けて、何となく怖い校長室の前を抜けて、
電話のベルが聞こえる事務室の前を過ぎると、理科準備室がある。
 新しい校舎ができる前、ここは「準備室」ではなくて「理科室」だった。
 班単位で座る頑丈で大きな机にはガス管が引いてあり、バーナーで実験をす
ることができた。
 この学校の大半の生徒達は、この理科室を「怖い場所」だと思っている。
 原因の一つは、黒板の廊下側の横にある子供の背丈ほどの高さで、カーテン
のついた木枠のガラスケース。
 もう一つは、黒板の窓側の横にある、薬品保管室への扉だった。
 ガラスケースは、ずいぶん古くて、ずいぶん変わった形をしていた。
 茶色く日に焼けたカーテンがガラス戸の内側に掛かっていて、中に何が入っ
ているのかまるで見えない。
 裏側をのぞき込むと、蝶番と鍵穴が見える。
 扉になっているそちら側が本当は「前」で、カーテンを開けて中身を見るに
は、そこを開けないといけないのだ。
 最初はちゃんと扉の方が前になっていたのだけれど、何年か前にひっくり返
したらしい。
 わざと扉が開かないようになっているには理由がある。
 実はガラスケースの中身は、人間の骨格標本なのだ。
 それも、作り物ではなく、本物の子供の骸骨らしい。
 鍵は昔からこの学校にいるおじいさんの理科の先生が個人的に管理していた。
他の先生でも開けることはできかった。
 なぜならそれはその先生の私物で、実は標本にされたのは先生の子供なのだ。
 この先生も数年前に亡くなった。
 身よりのない先生は、遺言で自分の死体を大学に献体した。先生の骨は骨格
標本にされて、この学校に寄付された。
 先生の骨格標本は大きいので、薬品倉庫の中にしまわれている。
 ある夜中、変な物音がしたので、残業をしていた先生が理科室にゆくと、ガ
ラスケースの扉が開いていた。
 不思議に思って電気を点けると、薬品保管室のドアも少し開いている。
 恐る恐る中に入って、ドアの隙間から保管室の中を覗くと…親子の骸骨がそ
ろって顎の骨をかたかたと鳴らしていた。
 そんなわけで、子供の骨が外に出ないようにケースはドアを壁に付けるよう
に置かれ、大人の骨が動かないように薬品保管室には鍵が掛けられている…。
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◇お願い
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・もし、文字化けしている様な箇所を発見したら、お教え下さい。
 チェックはしているつもりなのですけれど…
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