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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年02月07日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻73号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、お寒うございます、お待たせしました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、やっと日常生活に復帰出来た銀凰恵
です。でもまだ「創作生活」には復帰出来ておりません…ごめんなさい。

 と言う訳で、今号も神光寺かをり「フツウな日々」はお休みさせて頂きます。
 復帰時期は未定でございます。お許し下さいませ。
 それでは、今回の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ 小説「天狼戦記−華−」
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 華やかなローズレッドの絨毯と房飾りのついた石榴色のカーテン、猫足の勉
強机や書棚などの家具から細かい調度品に至るまで、見事に赤系で統一された
テリトリーの中央、そこに桜子(さくらこ)はいた。半眼のまま天井を見上げ
ていたが、
 ――…………あの子、捕まったみたいね。
 つまらなそうに欠伸をすると、本格的な眠りの体勢に入ろうとする。鋭敏な
聴覚が先触れより先に訪問者の存在を知らせていたが、彼女は無視を決め込む
ことにした。重大な用件であれば、また来るだろう。
「桜子様、ご報告に上がりました」
 予想にたがわず、有能な若い執事がノックの後、部屋に足を踏み入れてきた。
いつも通り、隙のない表情の下は地味なスーツ姿だが、体臭は正直だ。この不
測の事態に焦って噴き出した汗と血液の匂いが、部屋中に充満する。
 桜子は肺いっぱいに、柏木の匂いを吸い込んでから声をかけた。
 ──ヴフウウゥ。
『その傷、かなり辛そうだけど自業自得よ』
 常人の耳には、狼のうなり声にしか聞こえない。だが、柏木の耳にはしっか
り意味を持った言葉として届いているはずだ。
 もちろん、彼の瞳に映っているのも人としての桜子ではない。小花模様のベ
ッドカバーの上で、優雅に寝そべっている未成熟な狼のはずだ。《天狼》と見
紛うばかりの純白の毛並みだが、胸元に一ヵ所だけ灰の混じった部分がある、
そんな哀しい狼の姿に。
「はい、申し開きのしようがございません」
 柏木は胸に手を当て、白狼たる彼女へ頭を下げた。
『用件は何? 早くしてちょうだい。今夜はこのまま眠るつもりなのよ』
「やはり、桜子様は並々ならぬ力を持っておいでですね」
 柏木が珍しく驚嘆の声をあげた。
 ──変性(へんしょう)、人型から獣型への変化には爆発的なエネルギーを
要する。
 当然、肉体的な疲労と何よりも精神的な疲労が著しい。獣型でいる時間が長
ければ、それだけ獣の強靱な本能が人間の本能を凌辱する。その獣性をコント
ロールし、あくまで人間としての意識を保つためには、より純度の高い人狼の
血が必要となる。これこそが、直系が変性できる所以だ。
 そう、変性するだけなら、人狼の血の薄い柏木や傍流の者達でさえ可能なこ
とだ。
 しかし、貧弱な人狼の精神力では獣性が暴走し、二度と人間の姿に戻ること
ができないだろう。
「先ほど《小銀》が知らせに参りました。六花様が館を飛び出されました」
 柏木の従使(じゅうし)は、桜子も時折に借りている白狐の《荷葉(かよう)
》の他に、格下の《左近》《右近》がいる。それが、なぜ?
『《小銀》……兎影の?』
 語尾には、軽い疑問符がついていた。
 兎影とはその名の通り、死した雪兎の肉体を持つ神楽家の従使だ。はっきり
言って、まるでボディーガードの役目を果たせない愛玩用の従使でしかない。
「はい。六花様の身辺警護には、《小銀》を使っておりました。初めて雪兎を
見たと、とても喜ばれておりました」
『なるほど……ね』
 毎回のことながら、柏木の手腕にはうなるしかない。外見は細身の優男風だ
が、その実、この館の誰より頭の切れる執事なのだ、と桜子は改めて実感する。
 姿を隠すのにも、実は力を使う。その点、兎影ならばそのままの姿で、六花
のそばにいることが可能だ。
 そして、確かに雪と氷の結界で守られている神楽家の館内と、その館を含む
山全域に張られた結界という、二重の結界内にいる限りは、それで用が足りる
だろう。
 《小銀》は六花が館周辺の雪氷結界を出た瞬間、即座に主の元へ報告に戻っ
てきた。追跡となると兎影ごときでは、荷が重すぎるからだ。
 それに……なにしろ時期が悪いものね。
 当主の代替わりを間近に控え、西陣家も呉家も間諜(スパイ)を大量に送り
込んできている。最近は人間の間諜まで現れ、そう簡単に始末するというわけ
にはいかなくなってきている。この山では能力が制限されるとはいえ、無防備
に飛び出した六花など、間諜達の絶好の獲物となってしまうだろう。
「先ほど、何者かが六花様に接触した様子です。いかがなされますか?」
 ふいに右眉をひそめ、結界師の顔となった柏木が中空をにらむ。「――この
程度ならば、必要ございませんね?」
 言外に込められているのは、六花を助けるのか、それとも見捨てるのか、で
はない。当主に悟られないように救出するのか、否かなのだ。
 柏木は神楽家の忠実な僕だ。これ以上、主の前で失態をさらすのが恐ろしい
わけではない。病床の当主に心痛を加えるのが心苦しいのだろう。
 六花をあおった張本人の桜子には、当然、行動に予想がついていた。だから
こそ、驚いた様子も見せず、柏木を責めることもなかった。
 第一、これは彼のミスではない。
『いいこと? あの子に手は貸さないでね』
 桜子は見極めなければならないのだ。あの少女がこの館の外に出て、それで
も生き延びられるのか、否かを。
 戸口で直立姿勢だった執事が三歩、桜子に近づいた。彼女が好きなとび色の
瞳は暗い。
「……何をお話しになられたのですか? 六花様はひどく混乱なされているご
様子でしたが」
 語調は穏やかだが、語尾が荒い。相手が腹の底から怒っていることを桜子は
見抜いていた。それだけ長い付き合いだ。人の感情にはどちらかといえば鈍感
な彼女だが、例外はある。
「六花様に、何を、おっしゃられたのですか?」
 柏木の顔には、苦笑いすら浮かんでいる。
『あの子が義務で生きることは、誰も望んでいない。あたしはそう言っただけ
だわ』
 金の瞳で美青年をにらみつけたまま、勢いよく立ち上がる。上等な絹のベッ
ドカバーに四肢の爪が食い込んで、いつか小さな穴を作ってしまった。
 桜子はあまり口が上手くない、そんなことは自分でもわかっている。常に上
に立つ者はその必要がない、存在感とカリスマ性がありさえすればいい、とい
う祖父の考えを体現したからだ。
 だけど、自分でも嫌になるわよ。
 桜子は言葉が辛辣な上、かなり要約してしまうせいで、言いたいことの半分
も人にまともに伝えることができない。その点では、驚くほど兄の一樹に似て
いた。彼は沈黙を美徳とする少年だが、少ない言葉数で人の心をえぐるのが上
手いのだ。
 あれだけ肉体的にも精神的にも弱っている子供──実際、本当に幼い──に
自分の毒舌は堪えたろう。
 だからこそ、あたしは言わなければならなかったのよ。すべてが、手遅れに
なる前にね。
『あの子の両親が死んだのは、命運でしょうね』
 柏木の口から、ため息がもれる。
「なぜ、最初からそうおっしゃらないのですか? 六花様はきっと勘違いをな
さった」
『…………柏木』
 ――どうして、お前は神楽の血族なら誰にでも優しいふりをするの? 心に
ある者は神楽家の当主だけなのに…………。
 現存する神楽家、西陣家、呉家という大きな三つの流れ以外にも当然、人間
の世界に潜伏した人狼達がいる。血の誇りよりも穏やかな生を選びとった者、
掟を破り一族から追放された者達だ。
 彼らは人狼の血は引くが、人間との婚姻によって血の濃度が薄まり、本家筋
から見れば驚異的な能力は期待できない。
 その流れとはまた別の進化をたどり、微弱な人狼の力を補うため、突出した
能力を持する者達が、通常は《影の者》と呼ばれる呉家お抱えの結界師や縛師
だ。
 守の結界師は従使達でさえも出られない牢や、一族の当主のための堅固な結
界を数人単位で張るのが仕事だ。攻の縛師の方は存在のみがわかっている程度
で、次期当主候補の桜子ですら多くの情報を持っていない。
 柏木の素性は有能な結界師ということ以外、霧に包まれている。
『お前は知っているでしょう? あたしの一番の望みは、いつだって血族の存
続よ。この家には弱者はいらないの』
 ブルンッと、桜子は大きく首を振る。
 いつの間にか、桜子は祖父《檜樹》と同じことを思い願うようになった。弱
いことは罪だ。自分だけでなく、周りの者達まで危険にさらしてしまう。
『あの子も養父母に対する罪悪感で自分を責める暇があったら、強くなる努力
をすればいい』
 ――あの人のように、すべてを放棄してはいけないのよ。
 桜子はあの壊れかけた少女が、心底、哀れでならない。犠牲はあの人だけで
充分だというのに、祖父は何を考えているのだろうか?
『ねぇ、誰だって自分の血から逃げられないでしょう? だったら、強くなる
しかない。できなければ、あの人のようになるだけよ』
 さすがの桜子も、あの人のことを話すときだけは胸が辛くなる。語尾は震え、
声音が高くなるのを抑えることができない。
 こういうときは、柏木の聡い耳が憎らしくなるのだ。
「自分さえも傷つけるほどに強くなられるのは、賛成しかねます。主を補うた
めに従使や私達の存在があるのですよ、桜子様」
 人狼の各一族には特有の従使がいる。大抵の野性動物なら従使にすることが
できるが、適性と相性という点をとって、いつしかこれらの動物達を選択する
ようになったという。
「ですから……」
 続く言葉を予期して、桜子は先にそれを制する。
『もう寝るわ、さがりなさい』
 従使とは人狼を補佐し、いざとなれば楯にもなる存在。次期当主候補の桜子
には、その従使が一匹もいなかった。

                                 続く
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