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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2004年01月31日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻72号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、お寒うございます、お待たせしました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、頭痛と倦怠感と吹き出物多発に未だ
悩んでいる銀凰恵です。
 何とか起きてオシゴトをしておる訳ですが、検索サイト「ぴあすねっとNAVI」
(http://jhnet.sakura.ne.jp/piasunet/)のCGIに機能を追加する作業を終了さ
せたところで、力尽きました。

 と言う訳で、今号も神光寺かをり「フツウな日々」はお休みさせて頂きます。
 復帰時期は未定でございます。お許し下さいませ。
 それでは、今回の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ 小説「天狼戦記−華−」(9 第8話)
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◇連載小説 天狼戦記−華−                 作:くまの
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 この針葉樹の山道は冥(くら)い。
 頼みの月光は空を覆う樹々に完全に遮られ、ほとんど手探り状態で進むしか
ない。何度か木の根に蹴つまずき転んでいるうちに、六花(りつか)のコート
とズボンは雪にまみれてしまった。
 まったく、このズボンは薄い生地であつらえられていて、防寒には何の役に
も立たない。クローゼットにあった他の洋服同様、実用性に欠けることを思い
知らされた。
 あの家の娘になるということは、いかなるときも雪の山道を歩く事態に陥ら
ない生活が、完全に保障されているということなのだろう。
 とりあえず、自前の黒いコートを羽織ってはいるが、手袋とマフラーは忘れ
てきてしまった。探せば部屋のどこかにあったのかもしれないが、そんな余裕
はなかった。六花は一刻も早く、あの館から出て行きたかったのだ。
 だから、彼女は山の冥さに気がつかないふりをしていた。
 ――…………。
 人狼一族のように気に敏(さと)い者ならば、山のそこかしこに生命の息吹
きを感じることができる。息も凍える冬といえども、真夜中といえども、野生
動物にとっては最も活発に動き回る時刻だ。その時刻にあって、山で息するす
べての生物が死に絶えてしまったようだ。
 彼女の足取りは、我知らず徐々に重くなっていく。桜子(さくらこ)が退室
した後、衝動的に屋敷を出たものの、この下山道を見つけるのに手間取ったせ
いもある。慣れない雪道はいたずらに体力を消耗するだけだったし、雪風と自
分の汗のせいで体温がほとんど奪われてしまっていたせいもある。
 だが、実のところ、六花の無意識が強制的に足を鈍らせているのだ。
 家に帰りたい。
 ただ、その想いだけが、彼女の小さな身体を突き動かしている。そのために
は、この山を生きて下りなければならない。だからこそ、安全な屋敷から離れ
たくない、という矛盾に彼女自身、気がついていない。
 ――早く家に帰りたい。
 東京のマンションに帰ったら、もしかしたら両親が先に家に戻っているかも
しれない。そんな気がしていた。
 六花は自分の考えがひどく気に入った。大きな黒い瞳に一瞬、強い光が宿る。
 そうだ、私ったらどうして、こんなところにいるの。早く帰らなきゃ、お母
さんが心配してしまうじゃない。
 両親に会えたら……父親は笑って自分のことを抱きしめてくれるだろうか。
苦しくて寂しい夢を見たと泣いても、母親は許してくれるだろうか。
 とりあえず、一歩でもいい足を前に出そうと思った。何も考えずに、次の一
歩を。何千歩、何万歩かかっても、いつかは麓の町に辿りつくだろう。明確な
意志を持ったことで、彼女の心に活力が湧いてきた。そんなときだった。
「――ちょいと、お待ちよ」
 突然の呼び声に、とっさに六花は足を止めた。同時に、甘ずっぱい果実の匂
いが鼻腔をくすぐった。
「…………………………?」
 振り返った先には、ただ白い闇が広がるばかりだ。だいぶ下山してきたため、
前方にはぽつりぽつりと町の明かりが見え始めていた。その淡い光を背景に、
彼女は信じられないものを見ることになる。
 雪が動いた。雪面の一部が盛り上がり、徐々に人の手や足、胴体を形作って
いく。ものの数秒ですっきりとした着物姿の女形になった。くくりあげた髪が
なまめかしい妙齢の女は、固まったまま動けない少女に向かって冷たい息を吹
きかけた。
 …………雪女?
「この刻を待っていたんだよ、あんたが結界から出てくるのをね。神楽椛(か
ぐら もみじ)、さあ、《天狼石》を渡してもらおうか?」
 呆然としながらも、六花の中には冷静に状況判断をするもう一人の自分がい
た。警戒信号が赤く点滅し始める。──危険。
 六花の足は主人の防衛本能に忠実に動き出していた。もつれながらも、華奢
な身体を懸命に運ぶ。だが、よそ者にはどこまでも意地悪な山道だった。雪に
隠れた木の根に何度も転びそうになる。
 息が苦しい。吐くばかりで、上手く吸うことができない。苦しくて、肺が焦
げそうだ。涙をこぼそうにも、目じりに浮かんだ先から凍り付いてしまう。
 ――六花は泣き虫だから、人より泣くのを我慢ぐらいでちょうどいいのよ。
 そんな口癖が今になって鮮明に思い浮かぶ。泣き虫だった母親は、自分によ
く似た性質の養い子のことが心配だったのだろう。
 こと、このことについては、六花は厳しく躾けられた。哀しいこと、辛いこ
とがあったときは下腹に力を入れる、そうすると大抵のことは我慢できるのだ
そうだ。
 我慢? まだ、我慢しなきゃいけないの? もう、いいじゃない。なぜ、私
は逃げなくてはいけないの?
 諦めにも似た感情が、六花の心の底から吹き上げてくる。
 そうだ、自分はただの一般家庭の女子中学生だ。知らぬ間に人を傷つけてい
たとしても、二度も命を狙われる謂われはないはずだ。
 自分には『生きている資格』がないと、桜子にはっきりそう言われたのだか
ら。両親のために『生きる義務』もないのだ。だとしたら、結論は一つだ。
 木立が切れた場所に出たところで、唐突に六花は立ち止まる。勇気をかき集
めて、後ろを向いた。思った通り、息も切らさず追ってきた雪女と対峙するこ
とになった。
「諦めが早い子で嬉しいよ。さあ、渡しな」
 雪明かりに照らされた顔には、母親と同じ右目に泣きぼくろが見える。
「………………」
 《天狼石》なんてものは、私は知らない。
 かぶりを振る六花に、女はくつくつと忍び笑いをもらす。ひとしきり笑った
後、静かに袂から細身のナイフを三本取り出した。
「右にいくよ」
「…………ッ!」
 初めに衝撃が、次に焼けるような痛みが、六花の右腿を襲った。垂直につき
刺さったナイフを引き抜く勇気は、今の彼女にはない。
「いいかい? 今度は左にいくよ。あんたが例のモノを渡すまで、交互にナイ
フで突き立ててあげようね」
 弱者をいたぶる喜びを隠しもしない、恍惚の表情で女がナイフの刃をなめた。
一歩、二歩と、本能的に後ずさった六花は、山全体に張り巡らされていた罠の
一つに踏み込んでいた。――視界が一転する。
 雪面の下から飛び出した数本の蔦は、あらかじめ結界師から仕込まれた通り
の動きをした。すなわち六花の両足を固く縛り、そのまま近場の樹木にからみ
つき彼女を吊り上げたのだ。
「おやおや、自分の家の罠に引っかかるなんて愚かな娘だね」
 今、六花は針葉樹に宙吊りされた状態で、咽喉元にナイフを突きつけられて
いる。女から漂う匂いは、腐り落ちる寸前の果物の匂いに似ていた。まだ嗅い
だことはないが、死の臭いは……屍臭とはこんな感じだろうと六花は思った。
 私……死ぬの? ここで、この雪女に殺されるの? 殺されなきゃ、いけな
いの?
「いいかい、下手な芝居はおやめよ。あんたが持っていることは先刻、承知な
のさ」
 ナイフの切っ先が六花の首すじに浅く食い込み、下方向に一筋の線が引かれ
た。頚動脈は避けている。
 きっと、楽に殺してはくれない……。
「やわらかい肉だね。馬鹿だね……動いたら、ますます酷い傷になるよ」
 耳元で囁かれる呪いの言葉に、六花は気が遠くなりそうになる。身体が震え
ているのは恐怖のためか、痛みのためか、それとも寒さのためなのか、自分で
もわからない。
 誰か、誰か助けて!
 ただ、それだけを六花は願い続けた。
                                 続く
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おまけのボヤキ。
 知ってる人の作品が、アニメ化されたり、ゲーム化されたりしたうえに、
おたく系検索サイトで登録カテゴリの一つになる時代が来るとは、思っても
いなかった訳で。
 更に、その作品だけ専門に扱う検索サイトが存在していると言うのは、
驚くのを通り越して、なんだか空恐ろしい訳で。

 まぁとりあえず、お財布の中に400円ほど余裕のある方は、荒川弘著の
「鋼の錬金術師」のコミックスをお買いあげください…と、密やかにエール
を送っておくことにします、ハイ。
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 1. 蹴りたい背中
 2. 週刊わたしのおにいちゃん 第1号
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