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-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
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---------------------------------------------- 2003年10月25日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻60号 -----
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◇ご挨拶
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 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、お寒うございます、お待たせしました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、銀凰@お間抜けサンです。
 今回くまのサマの連載が最終回となりました。連載、ご苦労様でした。
 次号から、銀凰の新連載が始まる「予定」です。

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 それでは早速、今回の作品をどうぞ。
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◇本日の目次…
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 ◆連載小説…くまのサマ 小説「星眼の巫女」(18 最終回)
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◇連載小説 星眼の巫女                   作:くまの
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*終章*
 若いというより幼い宮女が議室の壁に水を打ち、ぎこちなく一礼をして退室
していった。
 夏季の一時期だけ、王宮内ではこのような水打ちが行われる。
 石積みの壁は適度に湿り気を帯び、室内の温度を快適に保ってくれる。実留
(みとめ)がこの光景を見たならば、天然のクーラーだと判じるだろう。
 むろん、国土の半分が砂で覆われているバクターシア王国では、水は貴重で
ある。これは王宮内でも限られた者にだけ与えられた特権だ。己の権力を誇示
したい賓客がこの議室に居る場合には効果的なのだろうが、王子とその側近が
列席しているだけの現状では、国家予算の浪費でしかない。
「バルディス様。幾度、水打ちを命じればお気が済むのでございますか?」
 二人だけの会議が始まってから、これで四度目の水打ちだった。かの王子は
座したまま、未だ水打ちの命しか発していない。議談用の長卓の端と端、だい
ぶ距離はあったが下腹に力を込め、シーシャは声を発した。
「バルディス様。水は我々だけのものではございませぬ」
 碧の瞳が少年を射抜くが、
「…………………………」
 当人はひたすら口に含んだ氷菓をかみ砕いている。
 シーシャは辛抱強く、主が氷と戯れるのに飽くのを待っていた。が、市場の
犬のごとく卓上に突っ伏したときには、さすがに眩暈を感じた。
 まさか、私の仕事は王子に行儀作法を叩き込めということなのだろうか?
 シーシャはバクターシア王国に帰すると同時に、バルディス王子のお側仕え
の地位を獲得した。
 今、彼が身につけている長衣は深い瑠璃色だ。主の瞳と同じそれは、臣下の
中では一番位の高いことを証明する。王宮警護で一生を終えるはずの下級貴族
の身では破格の昇格であり、やっかみも多いのだが、ならば代わってくれとい
うのが本心である。
 もう、奥の手を使うしかないようですね。
 心の底で嘆息をつきながら、シーシャはすまし顔でエアメールを懐から取り
出した。
「実は実留さんから、お手紙が届いておりました」
「何ッ!? そういったことは、早く言えっ!」
 なかなかに、効果があったようだ。
 伸びきった椰子ゴムのようだったバルディス王子の身体が、ぴんと張りつめ
たものに変わる。
「バ、バルディス様ッ!?」
 王族としてはあり得ないというより、許されないことなのだが、それが一番
早いと考えたらしい王子は初代王が主神から贈られたという神聖な議卓の上を
走ってきた。呆然とするシーシャから手紙を奪い去ると、ペーパーナイフを使
うのももどかしく封を破った。
「実留さんはいかがお過ごしでしょうか?」
 問いながら、実のところ、シーシャは実留と幾度か手紙のやりとりをしてい
た。
 もともと頭が切れる上、記憶力も抜群の男だ。短い日本滞在中に、日本語の
言語体系をすっかり頭に叩き込んでしまっていたのだ。
 だから、アンナに恋猫ができたことも、今年の『夏休み』という学術休業期
間中、渡英を果たした実留が祖母に会ったことも知っている。

 結局、件の宝玉の残りは除去の儀式もなく、実留とアンナの身体から自然に
はがれ落ちた。
 アシュウムとローダットの姉妹神は、神話の世界に還ったのだ。ラディーカ
の熱反応の消失でも、四つ――正確には一つ分の邪眼の欠片と三つ――の神石
に神力が宿っていないことは明白だった。
 バルディス王子とマヤカは、世界の存続を決する瞬間は見逃してしまった。
王子は今でも時折、悔しげに「オレは何だったんだ!」と子供のように駄々を
こねる。
 もちろん、シーシャの前だけであったが。
 だからこそ、シーシャも巫女探しの旅が、本当に遠い昔のことのように懐か
しく思えるのだ。
「――実留さんは何と?」
「…………お前に任せる。オレは眠い」
 王子は早々に便箋から顔を上げ、また元の指定席へ悄然と戻っていく。
 卓上に残された、実留からの手紙は全文が日本語だ。見れば、彼女は意識し
て、ひらがなを多用してくれているらしい。王子が日本語の手習いを始めたと
いう、シーシャからの便りが届いたからだ。
 実留はバクターシアの共通言語に対する知識すべてを失ってしまった。細や
かな美しい手跡だったが、バルディス王子の頭で意味をなさない以上、ただの
記号でしかない。
「バルディス様ッ!」
 文面を追っていたシーシャは、とうとう羽根団扇まで使い、床で涼をとる主
をねめつける。
「どうした、実留の答えは否か? 手紙を寄こせ」
 あくまでも太平楽な様子だが、もう一度、手紙を受けとった王子の声には落
胆の色が見える。
「実留さんはバルディス様のご随意に、とのことです。ですが……私は反対で
ございます」
 バルディス王子が待っていたのは、これだったのだと思い当たり、ほほえま
しい気分が吹き飛んだ。
 彼は元巫女の実留とアンナ(?)の同意を得るために日本語を習い、果ての
ない想いで彼女達からの手紙を待っていたのだ。
「あの四つの神石を売り払うのが、なぜ悪いのだ? 残骸だぞ?」
 ──悪いのだ、悪いどころではない。バクターシアの国民がこの話を耳にす
れば、おそらく大多数が『否』と答えるだろう。
 真っ向からと堂々と断言されると、新任の側近は二の句が告げなくなってし
まうが、気を取り直す。
「そもそも、良い悪いの問題ではございません。王子は国の歴史を他国に売り
渡す気なのですか?」
 ようやく半身を起こし、王子は議論の席へと足を運ぶ。
「以前、お前は実留に言っていたな。国土は荒れ、国交もなく、ただ飢えを待
つだけの民をどうすればよいかと。これがオレの答えだ。あの神石は王の所有
財産ではないからな。さっさと金銀にでも換えて、今年の冬を越す食糧を確保
する」
 一気呵成に放たれた言葉は、なるほど筋が通っている。幾晩も夜も眠らず熟
考したのだろう、最近、王子の顔色が優れなかったのは寝不足のせいかと、す
ぐに思い当たった。
 このような国情にも関わらず、目を閉じ耳を塞ぎ、私腹を肥やす貴族ばかり
だ。国家のために一時私財を手放せ、と命じたところで、首を縦に振らせるの
は難しいだろう。
「神石など、また買い戻せばよいだろう」
「買い戻しには、売った値段の十倍が相場。ましてや、いわくつきの最高級の
宝玉でございます。残骸とはいえ」
 簡単な言いぐさについ、皮肉が出てしまう。
 真っ先に食いついてくるだろう隣国の君主が、一度手にした宝をそうやすや
すと手放すとは思えない。これから先、国政の取引きに使われてはたまらない。
「楽に買い戻せるぐらいに国を建て直す。これが、我が国の目標にならないか?」
 真摯な青い瞳は星も眠る真夜中ではなく、暁が燃える夜明け前を思わせる。
 シーシャは己の矮小さに身体が縮まる思いがした。
「ああ、それから、アシュウム女神の神殿とローダット女神の神殿の宝物蔵、
あれもすべて虫干ししておいてくれ。近いうちに全部、売り払う予定だ」
「………………」
 さすがのシーシャも絶句した。
 当の王子は大きなあくびを一つすると、白絹の卓上クロスを引き寄せ頬をあ
てる。本格的な眠りに入るつもりのようだ。と、すぐに規則的な呼吸が聞こえ
てくる。
 王族の血脈や金銀に無頓着なのは、バルディス王子の長所であるが……。こ
こまで来ると、いっそ清々しい気持ちになってくる。
 ──これが、あなたの初手なのですね。
 間もなく、王宮の官吏職には貴族の子息だけではなく、平民からの登用も始
まるだろう。貴族の吸い上げが黙認されていた市場の売上げも、ようやく国民
に還元される。
 すでに、フェルセル王の御印(みしるし)は取ってある。
 だが、現王御代の重臣達は皆、全力をあげてバルディス王子をつぶしにかかっ
てくると考えて間違いない。しぶといアルメナ王妃の存在も、シーシャには気
掛かりだ。彼女の側には、しっかりとアドビス・ダンディールの姿もある。彼
の宗教じみたアルメナ信仰は極端だが、敵ながら見上げた根性だと個人的には
見習いたい部分もある。
 極端といえば、バルディス王子は民の意見を聞き入れる「開かれた王室」、
というものを目指すのだと熱く語っている。身分の低い王妃から生まれた、自
らの出生を考慮してではないだろう。ならば、王政の廃止が手っ取り早いのだ
から。
 王家は神々の子孫だと、神話で語られている。市井での暮らしが長かった王
子は国民感情に敏感に反応できるため、神話の世界に土足で踏み入れるような
真似はしないのだ。
 生母アロージナ王妃の悲劇を繰り返さないために、国王という地位に縛られ
て愛する女を幸せにできなかった男のために、王子は決心を固めたのだろう。
その幾つかの理由うち、一つに柴田実留の存在があるのだとシーシャは思う。
 でなければ、読めもしない便りをそっと懐に忍ばせる男はあまりいないだろ
う。
 彼女ならば、きっとよい王妃となり王子を支えてくれるでしょう。それが、
実留さんにとって幸せかどうかはわかりませんが……。
 シーシャの鋭い碧眼は、容赦なく現在のバクターシア王国を映し出す。議室
のテラス越しに広がる岩と色砂で造られた街並みは、王都だというのに色あせ、
活気がない。この時期ならば、美しい深緑の海となる田畑には雑草ばかりが生
い茂り、朽木が横倒しになっていると報告を受けたばかりだ。
 日差しを避けて、建物の影に寝転ぶ子供達と犬の姿が見える。驚くばかりに
痩せこけたあの子供達、彼らが成人したとき、この国はどうなっているのだろ
う。まだ、飢えや病が苛んでいるのか?
 無防備に眠り顔をさらす王子に、シーシャは我知らず笑みが浮かぶ。
 ――それでも、私は貴方とこの国の行く末が見たいのです、バルディス様。
 遠い未来に心をはせて、男は今だけ許されたゆるやかな午後に身を任せた。
◆あとがき◆
 休み休みの連載でしたが、お付き合い下さいましてありがとうございました。
多謝。
                                 続く
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