----------------------------------------------------------------------
-------◇テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◇-------
----------------------------------------------------------------------
---------------------------------------------- 2003年10月11日号 ----
------------------------------------------------------- 通巻58号 -----
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ご挨拶
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 初めましてのかたは、初めまして。
 そうでない方は、お寒うございます、お待たせしました。
 自称「文芸同人誌」主婦と創作の主幹、銀凰@お間抜けサンです。
 それでは早速、今回の作品をどうぞ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本日の目次…
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆連載小説…くまのサマ 小説「星眼の巫女」(15)
 ◆    …神光寺かをり 小説「舞殿の【女帝】」(20)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━メルマガ紹介━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        ぐうたら拾い読みマガジン「他力本願」
 発行人が「おもしろそうな事件」や「不思議な何か」を見つけたときに、
割と不定期に発行する、三面記事なニュースメルマガ。…それが「他力本願」
      広く浅くいろいろな記事をピックアップします。
  http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=005334
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★☆★ サンド・ウォームの泳ぐ星 ★☆★
わたくし葵むらさき作のSF長編小説をお届けします
舞台は宇宙の遥か彼方、そこで突然ヒトを襲う未知の恐怖、しかし真実は哀しく
切ない、優しい生き物たちの物語……ハンカチを用意して読んで下さーい!
http://melten.com/osusume/?m=11489&u=10992
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━メルマガ紹介━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━PR━
このコーナーでは、相互広告にご協力くださるメルマガを募集しております。
           詳しくはメールフォームにてお問い合わせください。
     →http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/5751/senden.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇連載小説 星眼の巫女                   作:くまの
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 長い急勾配の階段は屋上へと続いているようだった。ヘリが待機しているの
は間違いない。
 逃げられたら、もうチャンスはないかもしれないわ……。
 カイも実留(みとめ)と同じ考えなのだろう、長い足を使い、数段抜かしで
階段を駆け上がる。その勢いのまま、正門と同じく赤茶に腐食した鉄扉を押し
開けると、二人の前に雄大な山野が広がった。
 それまで、地下迷宮を這いずり回っていた実留は極度の緊張と酸欠のため、
膝をついてしまう。彼女の栗色の髪と風塵を巻き上げて、今にも飛び立とうと
しているのはオリーブ色の軍用ヘリだった。その爆音にも負けない、カイの怒
声が響きわたる。
「待て! そのラート像をこちらに寄こせ!」
 操縦桿を握っているのはジンだろう。ヘリのステップに片足を乗せかけた若
い紳士が、ゆっくりと振り返る。顔半分を覆う黒いサングラスのせいで表情は
まったく分からないが、唇の両端は笑みの形につり上がっている。
「やはり、貴方が来ましたか。バルディス・カイ・フェルセル、穢れた血の王
子よ」
 ダークスーツのアドビスは、そのままビジネス街の人間のように、実留には
見えた。
「そのサングラスを取れ、卑怯な奴だ。第三王妃、一の側近、アドビス・ダン
ディール」
 たとえ庶民としての暮らしが長くとも、一国の王子としての威厳がカイには
生まれつき備わっていた。
 幼いトヌ王子の人となりを知らない実留は断言できない。だが、バクターシ
ア王国の今後の発展のためには、生粋の王族のトヌ王子ではなくカイの力が必
要になる予感がする。
 彼は国民の生の感情を体感した唯一の王族である。王宮の外で日常的に起こ
る飢えや病、戦さが生む、やり場のない怒りや哀しみも、カイなら頭ではなく
感情で理解できるだろう。
「卑怯ついでに、文明の利器も使わせていただきます」
 アドビスは腰の剣ではなく、懐に手を入れる。
 黒光りする拳銃はヤクザが入手する製造番号を削った改造銃ではない。軍用
ヘリといい、拳銃といい、アドビスのやり方は自国以外のスポンサーの存在を
ほのめかす。
「なに、寂しくはない。巫女殿もすぐに後を追いかけてゆきます」
 檄鉄を上げ、引き金に指をかける。銃口を見つめたまま、実留は指一つ動か
すことができない。
 ――………………みゃ。
 それまで、主に大人しく抱かれていた仔猫が、ふいに低く鳴いた。アドビス
の注意がそれた隙を狙って、間合いに飛び込んだカイの身が沈む。左手でコン
クリートの床をつかむと、アドビスの腕を蹴り上げた。はじき飛ばされた拳銃
は、そのままフェンスを高く越えていく。
「──こしゃくな真似を!」
 端正なマスクに怒りの表情が浮かぶ。
 愛用の宝剣は女神を宿した実留に奪われ、今は山中に置き捨てられてしまっ
ていた。彼が手にしたのは幾分、幅が広めの無骨な剣だった。
 うなりを立てて風を切るアドビスの剣技に対して、カイは蹴り技だけで対応
していた。剣は初めから使う気はないようだ。
 アドビスはアルメナ王妃の側近というだけあって、たしなみとしての武術全
般はスマートにこなせるらしい。だが、残念ながら、彼は貴族的容姿を裏切ら
ない凡庸な剣の遣い手だった。型にはまった攻撃スタイルでは、カイの八方に
舞う動きを封じることはできない。
「子供一人に、かなり難儀しておられるようだ、お手伝いしましょう」
 気楽に葉巻を加えていた顎髭男が、のそりと戦いの場に出てきた。いつのま
にか、ヘリのエンジン音は止まっている。
 この上、ジンがアドビスの戦力に加われば、完全にこちらの勝気が無くなっ
てしまう。
「小娘、そこをどけ。まだ、死にたくはないだろう?」
 女神の加勢がない実留に、何ができるわけでもない。ただ、首をかしげるジ
ンの前で両手を広げて立っていた。膝が情けないほど震えたが、不思議に恐ろ
しいという気持ちは消えていた。
「カイとシーシャさんが助けてくれなければ、私はもう死んでいる身だもの」
「ふん、その借りを返す、か?」
「ねぇ、あなたがしていることは、妹さんも危険にさらすことなのに……どう
して?」
 ジンの瞳にわずかな心の揺らぎが生まれたが、すぐに消えた。明確な殺意が
手刀となって実留を襲う寸前、
「待ちなさい、お前の相手はこの私ですよ」
 疲労の色は見えるものの、褐色の青年は優雅な足取りでジンと実留の間に入
る。
 シーシャさん……。
 広い背中が一段と、頼もしく見えた。
* * *
 ――戦さが長引けば戦力が等しくとも、体力が劣るこちらが不利じゃ。
 血の匂いに目覚めた戦さ好きの女神が、実留のなかで動き出した。
 すでに、カイの動きは精彩を欠いている。彼は息があがっているのに、敵は
額の汗をぬぐう間を作ることができる。この差は大きい。
 無意識のうちに、負傷した右肩をかばってしまうのだろう。そのため、右か
らの攻撃に反射的な受け身が取れない。地面と接触した肩のダメージが少なく
なるようにと、慣れない頭を使うから刃の猛攻に反応が遅れるのだと、女神は
低く笑う。
 シーシャはアドビスとの一騎討ちに、全力を注いでいる。マヤカは屋上の入
口で、やはり《頭のない蛇》の男達の相手に拳をふるっている。共に、こちら
にまで手を回す余裕などない。
 誰も傷つけず、殺さずに済まそうと考えているというのに、実留の手には身
を守る術がない。
 だから、女神自らが御手に馴染んだ宝剣を心の中で呼んだ。愛し子が心の底
から、それを望むのであれば女神に否応ない。
 実留の身体の主導権をもぎとり、邪魔になりそうな仔猫を投げ捨てる。
 ──妾が真名はアシュウム・シュレルナル。すべてを無に帰し、混沌の宇宙
に還す風よ、我の手の内に戻れ。
 実留の額、邪眼が発する紅の光が、突き出した両手に集まる。乱反射した光
は周囲の空気を熱し、熱気の籠もった空気は凝縮し冷えて望み通りの剣となっ
た。
 ――邪眼の巫女のみが使える破邪の剣じゃ。これで、妾がそなたの望みを叶
えるのは最後となる。心を決して、剣をとるがよい。
 女神の神力そのものを具現化した剣を手に取れば、自分がどうなるのか、実
留は理解していた。只人ではなくなる。
 カイとシーシャを助けるために、世界の人々を危険にさらすことになるかも
しれない……。
 みゃああ。
 膝に飛び乗ったアンナは鼻にしわを寄せ、飼い主を必死の形相で見上げてい
る。
「実留さんッ、ダメ!」
 破邪の剣に手を伸ばすよりも一拍早く、制止の声がかかる。
 褐色の腕に背後からはがい締めにされ、剣は遠くへ蹴り飛ばされてしまった。
マヤカは大きく肩で息を吐くと、破邪の力で底の溶け出したサンダルを脱いで
放り投げた。
「もう、あれで終わるから無茶はしないで」
 頬に傷を受けながら、マヤカは太陽のように微笑んでいた。
 彼女が手で示した前方向、ちょうど屋上の中央で、自らの短剣を太股に生や
した大男が倒れ、獣のような唸り声を発していた。動脈が切れているのだろう、
吹き出す血の量は尋常ではない。数分もせず、ジンは確実に死ぬ。
 顎髭男のはるか彼方で、アドビスはカイとシーシャにフェンス際へと追い詰
められていた。思わぬ展開に動転し、剣を振り回すただの木偶になっている。
 ――あの者はまだ死してはおらぬぞ。
 女神に同化しつつある実留にもわかった。男の身内にも、自分と同じような
噴火寸前のエネルギーを感じる。無くなっていく五感を最大限に使い、主の窮
地を救う活路を探っていた。失敗が許されない、一瞬の刻を待っているのだ。
 シーシャの操る剣の切っ先が、アドビスの喉を捕らえた。ジンはむくりと起
き上がると、「ラート像はここにある!」と叫んだ。
 それは、これから黄泉地へと旅立つ者の声ではなかった。
 ジンは自分の太股から短剣を引き抜くと、また切りつける。その筋にそって、
根元まで深く差し込んで、ある物を取り出そうとした。
 遠目にも、血と皮脂にまみれた聖像だとわかったのだろう。カイとシーシャ
の動きが止まった。
 すかさず、アドビスが刃の下をくぐり抜け、反対方向のヘリに向かった。そ
れには構わず、二人がこちらにやって来る。
 ジンが実留を見やって、唇を動かした。
 ――妹は先の飢饉で我が子に喰われた。
 もちろん、声など聞こえない。それでも、実留にはジンの言葉が聞こえてき
た。
 ――まさか、敵を討つわけにもいかんだろう?
 彼は痛みに顔をゆがめているようも、笑っているようにも、泣いているよう
にも見えた。
「――これは罠よッ!!」
 叫んだ後、実留はあらん限りの力でマヤカを後方に突き飛ばす。きっと、女
神は実留とアンナの身しか守ってはくれないだろうから。
 訳がわからないなりに、マヤカは受け身をとって、コンクリートの床を転がっ
ていった。
 ――――――ズン。
 神官を殺害したときの比ではない、大爆発が屋上で巻き起こった。爆風はジ
ンを粉々に吹き飛ばすと、次にフェンスをからめとり、最後には屋上のヘリを
さらっていってしまった。
「アンナ、アンナッ?」
 頭を振り、胸に抱えていたはずの仔猫の姿を探す。ふらりと立ち上がり、周
囲を見回した実留は殺気を感じ振り返った。
 額から右目にかけて、赤くただれた傷を持つ青年が剣を拾い上げていた。
「これが破邪の剣? 只人ならば、触れることもできないが、私はアシュウム
の呪いを受けている身なればこそ。邪悪な巫女よ、ご存知か? アシュウム女
神が戦さの際に必ず使用したという破邪の剣は、また不死身の神々を傷つける
ことができる諸刃の剣でもある」
 言い終わるなり、アドビスの放った破邪の剣は実留を正確に狙っていた。切っ
先は真っ直ぐに、邪眼のある眉間に向かっている。
 目の前を白い物体が過ぎた。
 次第に視界が筆をしぶいたように真紅に染まり、続いて馴染みのある生暖か
いものが頬や唇に飛んできた。どろりとした感触で、少し塩辛い味がした。
 実留は緩慢な動作で、可憐な花びらのように落ちていくそれを眺めていた。
「いやあああぁああぁ!」
 咽喉を裂くような自分の悲鳴を、実留はどこか遠い場所で聞いていた。
                                 続く
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
感想などは「主婦と創作」気付で(メールを転送致します)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 主婦と創作ではオリジナルなテキスト作品の投稿を募っております。
 自作(必須)で、テキスト形式メルマガで発表できる作品でしたら、小説か
ら俳句まで、ジャンルは問いません。 震ってご投稿下さい。
…でもとりあえず、規約には目を通して下さいな。
★投稿規約のページ
 →http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/5751/index2.html
★投稿用メールフォーム
→http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/5751/mmagazine.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
======================================================================
       使い道が選べる ポイント付情報配信サービス
       ▼△▼△ ★ わくわくメール ★ △▼△▼
         ●●●スピードくじで当てる!●●●
        20人に1人1000円 ◆ 100人に1人5000円
   さらに豪華賞品…プリンターーやノートパソコン…が当たる!?
         秋のWチャンスキャンペーン開催中!
            お申し込みは↓こちら!
      http://www.wak2mail.com/bfriend.asp?fun=53293022
======================================================================
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━PR━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇連載小説「クレール光の伝説 番外編 舞殿の【女帝】」第20回
                           作:神光寺かをり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
作者注※
この物語はお姫様倶楽部発行のビジュアルノベルゲーム「お姫様舞踏会オフラ
インスペシャル」の隠しシナリオをベースにした書き下ろし小説です。
ゲームはプレイヤーキャラの一人称視点で展開しますが、この小説は視点が三
人称に変更されております。
なお、神光寺かをりのウェブ小説「クレール光の伝説」とは微妙に設定が違う
部分があります。(それ故「番外編」なのですが)
また、ゲームのシナリオとも微妙に違いが生じるかも知れません。
著作権はお姫様倶楽部と神光寺かをりが所有しております。
著作者の許可無く転載・複製なさらないでください。
----------------------------------------------------------------------

『エル君に、ソードマンさん?』
 二人とも見かけが、昼間会ったときとは全くの別人になっている。今のブラ
イトから口と柄の悪い助平な剣術使いを想像するのは難しいし、今のエル・ク
レールから細身で凛とした貴族の「子弟」を思い浮かべることも不可能だ。
 ピエトロは一瞬「馬子にも衣装」という諺を思い浮かべたのだが、ほめ言葉
にはならないと考え直し、口にしなかった。
 だが、直後に浮かんだ疑問は、十分に推敲する以前に口から飛び出してしまっ
た。
「パトリシア姫のお友達と言うのは、どちらの方ですか?」
 言った後で、不適切な物言いだとは気付いたのだが、しゃべった後の言葉を
訂正することはできない。
 一人ヤキモキとしていると、パトリシアは、
「クレール様は、ハーンの姫様でしたのよ」
うれしそうに答えた。どうやらピエトロの質問は、運良く彼の意図した意味合
いにとられなかったらしい。
「ご不幸なことに数年前にお国が焦土と化してしまわれて、以来連絡が途絶え
ておりましたの。本日お会いできると知らされて、わたくし、本当にうれしく
て」
「お国が、焦土に?」
『エル君が「信じられる者が彼より他にいない」と言ったのは、そのためか!』
 ピエトロは驚いて、再度件の二人の方へ目を向けた。
 二人は、こちらを向いていた。
「クレール様!」
 パトリシアの呼びかけに、二人は少々面倒そうに体を動かし、人並みをかき
分けてこちらに近寄って来た。
 ブライトは形式通りの礼をして、パトリシアの手にキスをする。本当に昼間
の剣士と同一人物とは思えない紳士然とした行動だ。
 エル・クレールもスカートをつまんで、しとやかに頭を下げた。ピエトロは
あわてて彼女の手を取り、キスをする。
「私どもがいては、むしろ邪魔になりはしないかと思いましたので、お声がけ
しなかったのですが」
 丁寧に言ったのはブライトだった。昼間の話しぶりとのギャップが凄まじい。
愕然とするピエトロの耳元に、エル・クレールがささやく。
「彼も一応、場をわきまえていますから」
 言い得て妙な説明だった。
 そこでピエトロも「場をわきまえた」口調で、
「そうだエル君…いや、クレール姫。パトリシア姫に間違ったことを話されま
したね」
「私はただ、君のおかげで盗賊を発見することができたという事実を告げただ
けです」
 にっこりと笑った彼女だったが、不意に硬い表情になって、自身のパートナ
ーの腕をそっと引いた。
 気付いたブライトが、さりげなくあたりに視線を送る。
 どこか遠い一点を見据え、彼は
「あちらさんに悪意がないからこそ、邪険にもできねぇんだが…」
小さくつぶやいた。そして、素早くエル・クレールの腕と腰をつかみ、彼女を
抱え上げた。
「逃げるぞ」
 何事が起こったのかとピエトロとパトリシアが唖然とする中、当のエル・ク
レールがうれしげに一言、
「はい」
と答えた。ブライトはにんまりと笑み、
「それではパトリシア姫、お元気で。接待役殿もこれ以上ドジを踏まれませぬ
よう」
わざとらしく慇懃に言うと、その場から駆けだした。
 彼の腕の中で、エル・クレールはこれ以上の幸せはないといった笑顔を浮か
べている。
「パトリシア殿、またいずれゆっくりとお話をいたしましょう。それから、ピ
エトロ君お元気で。もしかしたらもうお逢いすることは無いでしょうけれど」
 あっという間もない。二人は人混みの中に紛れ込むと、ホールから消えた。
 入れ違いにその場へ現れたのは、ギネビア宰相姫であった。
 ギネビアはピエトロ達以上のしつこさで逃げ出した二人の影を探している様
子だった。まなざしにあきらめきれない悔しさが見える。
 しかし、彼女の立場であれば当然できること…衛兵を呼んで二人を追い、捕
縛する…は、全くしなかった。
 ひとしきりホールの中を見回すと、彼女は深いため息と自嘲の笑みを漏らし
た。
「パトリシアさん、お見苦しいところをお見せして、申し訳ありませんでした。
あのお二方にはもう少しゆっくりしていってもらうつもりだったのですけれど」
「いいえギネビア様。クレール様が社交をお嫌いなのは、わたくしも良く存じ
ております。それに、今のクレール様は、なんだかとても幸せそうでしたから」
 パトリシアは心からの安堵を顔いっぱいに満たして答える。それを見てギネ
ビアも相好を崩した。
「あなたも幸せそうですよ、パトリシアさん」
 彼女の視線が、ほんの少しピエトロに向けられた。
「ピエトロ、あなたにはパトリシアさんのお相手を充分に務めるように命じま
す。ただし、舞踏会が終わった後で、再度私のところに来るように」
                                …続く
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ○         。○          。○  ●    
  .・ .・○ 。. ●・.  ・.・● 。・.●・.  ・.・  ● 。
  新しい出会いのコミュニケーションをリードする★Nozzeノッツェ★
      http://e-kekkon.jp/?site_id=34&af_flg=1&ag_id=0
         まず無料で結婚相手を紹介します
  ○         。○          。○  ●    
  .・ .・○ 。. ●・.  ・.・● 。・.●・.  ・.・  ● 。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇お願い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・もし、文字化けしている様な箇所を発見したら、お教え下さい。
 チェックはしているつもりなのですけれど…
・投稿作品を募集します。詳しいお問い合わせは、以下のメールフォームから
 お願いしますです。
    →http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/5751/mmagazine.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
    ◆テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◆
発行人:銀凰恵
 URL :http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/5751/
 Mail: gin_oh@yahoo.co.jp
   このメールマガジンに掲載されている文章の全部または一部を
   無断で引用・転載することは、やっちゃだめです。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
このメールマガジンは、
『まぐまぐ』   http://www.mag2.com/m/0000093007.htm
『メルマガ天国』 http://melten.com/m/10992.html
『めろんぱん』  http://www.melonpan.net/mag.php?004900
『メルマガくらぶ』http://mmg.mmg-club.com/c10.cgi?10617
を利用して発行しています。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
 なお、当方では代理登録・代理解除は行っておりません。
                解除は上記アドレスから行ってくださいね。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・